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イカロスのsomaddesignのレビュー・感想・評価

イカロス(2017年製作の映画)
5.0
第90回アカデミー賞前に滑り込み鑑賞⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡
長編ドキュメンタリー部門の大本命

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アマチュアロードレーサーのブライアン・フォーゲルが、スポーツ界に蔓延するドーピングとドーピング検査をすり抜ける実態を暴くべく、自ら薬物を摂取して大会に挑む。UCLAの専門家に助言を頼むものの断られ、代わりにロシアのドーピング検査機関の所長グリゴリー・ロドチェンコフを紹介される。彼の助言に従ってドーピングの方法や検査をパスする手口を学ぶブライアンだったが、やがてロドチェンコフがロシアの国家主導によるドーピング計画に関与していることが明らかになって行く。

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しまった平昌オリンピック前に見るんだった!
あ、今年はロシアW杯もあった。

てっきりモーガン・スパーロック「スーパーサイズミー」かクリス・ベルの「ステロイド合衆国」みたいな、自分の体を実験台にした無茶ドキュメンタリーかと思ってたら途中から一転………。
陰謀渦巻くスパイ映画やんけ! フィクションじゃなく実体を持って進行形に事態が劇的に変わって行くから、着地点が全然予想つかない。
オリンピックに関する結末は知られてることなので、ラストがどうにもほろ苦い。


今作見るまでは「選手の知らぬまにドーピングさせられちゃってるケースもあるんじゃね? 選手個人に責任をおっかぶせるのは酷じゃね?」
と思ってたけど、いやいや知らぬ間とか全然無理。
少なくとも劇中出てくる方法でドーピングするなら、むしろ積極的に関与してないと、検査ですぐ引っかかるかドーピングしても効果が薄いのがよく分かる。


ロシア版スノーデン事件とは言い得て妙。
グリゴリーさんは何故かすぐ裸になる気のいいオッサンだけど、主観的な証言ばかりでどこまで信用していいか分からない。統失な陰謀論かと思ってるとちゃんと科学的裏付けが取れたりと二転三転。
関係者の不審死やIOCの謎裁定込みで、兎にも角にもおそロシア。

今作ののち、
「十分な証拠に基づき不正が100%立証されたのに、変化は何も起きなかった」と肩を落とすグリゴリーさん。今も証人保護プログラムを受け、身分を隠してアメリカの何処かで暮らしてる模様。母国に残した家族は資産もパスポートも没取されちゃったそうだけど、どうやって暮らしてるんだろうか。

当時スポーツ相だったヴィタリー・ムトコはその後副首相に出世するも、2017年末に国際オリンピック委員会から永久追放。ロシアのオリンピック委員会は資格停止とドーピング問題の調査と独立検査機関の費用1500万ドルを支払う裁定が下される。
一方ロシアはグリゴリー元所長に職権濫用の容疑で逮捕状を出し、国際指名手配犯にも認定。プーチン大統領激おこ中。
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