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スリー・ビルボードのマーチのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.4
この作品、個人的には別に好きじゃないんですけど、評価を高くせざるを得ないというか、作品自体の出来があまりにも良いので褒めずにはいられないんですよ!
別に好きじゃないんですけどね(2回目)


【省略レビュー】

今年劇場で観た映画の中で今のところ1番脚本が面白く、先の読めない展開に翻弄された作品。

さっきこの作品のレビューを書こうとしたところ、鑑賞当時(2/1)の下書きがメモ程度ですがあったので、それを引用して本レビューとします(なのでとっ散らかってますが許してください 笑)↓↓↓

看板に表と裏があるように、人間にも表と裏がある。3枚の看板が巻き起こす騒動は、3人の人物をフィーチャーしたまま予測不能の展開を見せる。そして作中で描かれる悲劇の連鎖は、心にしこりを残したまましばらく後を引くだろう。

一度この物語に身を委ねたら、頭を鷲掴みにされて砂利道を引き摺り回されているような感覚に陥る。それだけ卓越した内容の脚本であり、アメリカ社会の現状とその歴史を部外者ならではの視点から皮肉を込めて描き出したマーティン・マクドナーは、作家性が傑出しているとしか言いようがない。

悲劇の連鎖によるストーリーのツイストが、正義の存在しない街を怒涛の展開へと向かわせ、途方もなく呆気ない…でも強固なメッセージ性を含んだラストへと繋がっていく。特に圧巻な鹿🦌のシーンは、マクドーマンドの演技力の高さをこれでもかと伺い知ることができるし、思わず涙を誘われるほど感傷的な気持ちにさせられる。こりゃアカデミー主演女優賞も納得ですわ。
(マクドーマンド無双映画でもあるので『ファーゴ』を思い出さずにはいられない、コーエン兄弟っぽさも感じる作品でした。)

音楽は痛いほど登場人物たちの感情を剥き出しにしていくし、強烈な人間味や暴力性を見せてくるそれぞれの人物にも優しさがあり、必ずしも歪な人間として存在しているわけではないということを教えてくれる。分断された社会が立ち直る唯一の方法論を明示した作品でありながら、心震わせるシーンもある。人間に多面性があるように、この作品も色々な顔(側面)を見せてくるのだ。それを最も体現しているのがサム・ロックウェル、オレンジジュースのシーンなんて最高に泣ける…こりゃアカデミー助演男優賞も納得ですわ。

どんな人間も表裏一体であり、何かに対する意識や何かを必死で守ろうとする動機が人の片側を誇張させる。ミルドレッドが虫を起こしてあげる何気ないシーンや、ディクソンが犯人を捕まえようと奮闘する姿が実はしっかりとそれについて語っているのだ。

この映画への批判として“共感できない”というのがあって、自分が作品の質の良さは評価できても好きになれないのはそういうところにあると思う。『シェイプ・オブ・ウォーター』と共に今年の賞レースを賑わせてくれた作品であり、怒りは怒りしか生まないことを直接的にみせてくれた謂わば縮小版アメリカ社会のような映画。

「愛と怒りと赦し」このテーマが明らかにした尊さに、多くの人が気付く瞬間が来ればいいのにと願わずにはいられない。


【p.s.】
忙しくてレビューをしっかり書く機会が無いので超テキトーに今年観た作品を投稿していきます。
暇があれば正式なレビューと入れ替えますが、きっとそんな瞬間は訪れないでしょう。
だって、私ですからね。
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