マーチ

ディスコのマーチのレビュー・感想・評価

ディスコ(2019年製作の映画)
3.1
〈東京国際映画祭2019にて〉

カルト宗教バンザーイなエンタメ作品なのかと思って観に行ったら、そこはさすがコンペ作品、まさかのド真面目宗教映画。

モラトリアムな少女が自分の将来や今置かれている場所に疑問を抱き、そこからの脱却を図るためにあれこれするという昨今流行りのプロット。でも、この作品がそこで描いているのは宗教/信仰問題(及びその限界)。

実際の出来事をコラージュして作品に落とし込んでいるらしいので、宗教団体の描き方の新しさには興味深いものがあった。例えば、ネオ宗教とでも言うべきライブ形式の集会みたいなものがあって、そこで合唱される歌なんかがアホらしくて笑っちゃう。最近の宗教団体はライブハウスっぽいところで集会をするのかと勉強になったけど、これには若者の宗教離れによるポップさへの転換みたいなものが見て取れてなかなかつらい部分がある。

こんな感じで至って真面目な宗教映画であり、途中ではさすがに長すぎるだろと思わずにはいられない尺の説法も聞かされる。

ダンスシーンは少女の心情が揺れ動く様を表現していて、イマイチ宗教描写とのバランスが噛み合っていない感じだった。ダンスはキャッチーだし、確かに「ダンス×宗教」の映画と聞くと観たくなるので“してやられた感”がある。笑 それでも、他にもっと上手く噛み合うような表現手段があった気がしてならないし、作品そのものも真面目すぎるあまり「宗教」や「カルト」が持つ物々しさとは乖離していた印象で、そこが非常に残念。もっと露骨にカルトらしく描けばいいのにとも思わないけど、ダンスと組み合わせた以上は、そこの兼ね合いで映画としての決定打を出せなかったのは勿体無い。真面目なのは大変結構なことだけど…
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