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少女は夜明けに夢をみる/ 夜明けの夢のditaのレビュー・感想・評価

3.0
@第七藝術劇場   

パナヒの新作を観たばかりなので尚更どんより暗い気持ちになった。続けてさよならテレビを観たかったけどそんな気分になれなかったので黙って劇場にさよならを告げ、帰宅していざ感想を書こうと思ったけど書けないまま一日経ってしまった。まだ複雑な気持ちを抱えている。ので支離滅裂な文章で申し訳ない。

歴史と社会と信仰の膿みを浴び続けた少女たちの笑顔と涙の奥に見える「諦め」の感情を救い上げるために必要なものは、果たして家族なのだろうか。確かに、姉以外の家族には会いたくないと訴えた少女が両親と対面した時の涙も、泣きながら迎えに来てと祖母に電話をする少女の涙も本物だったのだろう。でも、この施設は更生をさせるだけではなく、少女たちの逃げ場でもあるようにみえた。だからこそ、家族ではなく他人の力で少女たちを救う方法を探さなければ、結局同じことの繰り返しになってしまうのではないかと思った。

いちばんの違和感は監督のインタビューがあまりにも矢継ぎ早で、この人は少女たちのことをあくまで「題材」としか見ていないのではと思ったこと。この映像を撮った目的は文字通り「大学の講義の題材」であると語られるので間違ってはいないし、ドキュメンタリーなのだから客観的に映し出すことのほうが正しいのだろう。監督の目的は達せられているし、問題提起にもなっているのだと思う。でも、この映画が扱っているのは「人」だ。どうしてもそのことに引っ掛かりを覚えた。

違和感を感じてしまったのはきっとわたしが塀の外から少女たちを見ているからだ。ここでも何度か書いているけれど、わたしは、他人の苦しみはその人にしかわからないと思っている。ただ、わからなくても、ただそばにいるだけでその人の気が紛れるのならばそうしてあげたい。何の解決にもならなくても、「夢は死ぬこと」という絶望から一瞬でも救われるのであれば、わたしの肌の温もりを伝えてあげたい。考えが甘いということはわかっている。でも、社会が少女たちを救えないのであれば、たとえ他人であってもそばにいる誰かが少女たちの冷たい心に触れ、心と身体の逃げ場所になってあげることが必要なのではないかと思った。
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