イホウジン

顔たち、ところどころのイホウジンのレビュー・感想・評価

顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)
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下手な劇映画よりもよほど丁寧な仕上がりになっているロードムービーである。

一般的に事実だけを追いがちなドキュメンタリー映画で、ちゃんと映画の始めと終わりが用意されており驚いた。最後の伏線回収も面白い。まるで台本があったかのような話の展開で、ドキュメンタリー特有の退屈さを感じなかった。
映画全体は「街に行く→街の人に会ってインタビュー→その人の写真を撮って街に貼る→感想のインタビュー」という単調な繰り返しなのだが、それが良い。写真を撮るという名目で本来関わることのないような他者の内面を垣間見るようなことが可能になり、つくづく人間社会の奥深さを感じることができる。また所々に監督やJRさんの内面を伺い知れるような場面も散りばめられており、まるで映画に登場する人物全てが主人公なのではと錯覚する。というか、写真の被写体はただ一人なのであり、その解釈もあながち間違っていないのかもしれない。
死んだ魚と監督の手術シーンを繋げて流したり、港町の撮影で作業員の奥さんにフォーカスを当てたりと、監督の思想を察することのできる描写もチラホラある。死が近い存在であること、男の力の強い映画業界を生き抜いたこと、監督の年の功が生み出したある種の極地なのだろう。
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