まめまめちゃん

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のまめまめちゃんのレビュー・感想・評価

4.3
ポスターはソン・ガンホの満面の笑み(ホント誰かわかんないほど)なのに、あらすじは光州事件…すごく気になって待っていて、近隣での公開がやっとやっと始まりました。

さて当然ながらソン・ガンホの満面の笑みはごくごく序盤です。泣いたり笑ったり怒ったり情けなかったりするフツーのちょっと知恵が足りなさげな韓国のおっさんソン・ガンホ。個人タクシー運転手で日銭を稼ぎ、家賃も滞納気味。大家の息子に娘がイジメられるのを気に病み、取材に訪れたドイツ人記者を事情も知らずに乗せていざ光州へ。
ソウルに住み新聞も読まなければ国の事情を知る機会も術もないいちタクシーの運ちゃんである。光州への入口で軍に車を止められても何のことかわからない。それでも光州に入ると彼の顔から笑顔も顔色もどんどん消えていき、目的は光州を抜けて己の正義を貫くこと、仲間の遺志を継ぐことに変わり、帰り道はハンドルを握る手にアクセルを踏む足に一層力が込められるのです。
光州のタクシーと軍のSUVの山道カーチェイスからのラストにかけて多少湿っぽい演出なのは残念でしたが、事件の凄惨さを容赦なく描かれた映像には圧倒され息を呑みました。

ペンの力なんて言いながら結局は都合のいい情報しか忖度せず国民に真実など報道しないのがマスコミであり、それは当時の韓国はもちろん今の日本だって同じだよと思わざるを得ません。正義とはなんだろうと考えるきっかけは、こんな物語にも隠されています。映画から学ぶことは実に多いと心から思う次第です。