ギルド

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜のギルドのレビュー・感想・評価

4.8
守っているものの大切さ、敵の脅威さ、それに抗いながら一つの目的へ到達しようとする描写が秀逸で素晴らしいです。それを素晴らしいものと思わせるにも主人公キム・マンソプとその仲間たちのキャラクターの描き方と演技にあります。

 キャラクターそれぞれに光州事件の真実と守りたい大切な存在をしっかり描いているからこそ、彼らの戦いや痛み・悲しみの重みを感じ取れて凄いと思った。その中に自己犠牲を伴うシーンを何度か見かけるけど、キャラクターをしっかり描いていて敵の脅威さを痛感するとこんなに惨くて重たくなるのだとこの作品を見て感じました。

 演技がみんな良くて、スリー・ビルボードのように一つの生活空間を投影しているような感覚になります。特にソン・ガンホ演じたキム・マンソプが持つ喜怒哀楽の描写はすごく良かったし、彼の持つ境遇や思考は共感できるし、自分の命と家族を重んじて自分だけ助かろうと過るシーンは凄く人間味があって好きです。あと世論に対する疑問や衝突した時に発する想いはまるで視聴者を投影しているかのような気分にもなったし、映画の中にいる気分にもなった。そうゆう思いに引き込むからこそ、光州事件のもつ狂気を体感できるんじゃないかと思った。

 ストーリーも凄く重くて惨いテーマではあるものの、重いテーマに内包している家族の温かさ/人の温かさ/生きることの喜びが良いブレンドで仕上がっていたし、前半から軍との衝突シーンまではコミカルで面白いシーンが多かったから、様々なトーンを持っているんだけど意外と見やすい構成で最後まで楽しめました。
 ただ、やっぱり重いし狂気を感じる部分が多いです。敵である軍は理不尽で簡単に虐殺するため脅威であることを強く描いていたし、後半のバイオレンスな描写は目を背けたくなるものばかりです。でも、そんな惨さをありのままに伝えて、その脅威への対抗・逃げ続ける姿は緊張感を高めていくし何が起こるかが分からないから最後まで持続しました。
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