映画全体が、一見オーソドックスでさりげない構図だけで作られているようにみえて、実は凄く計算されているというか、まるで主人公瀬川晶司こと“しょったん”の性格、優しさがそのまま画面に反映されたように感じて、冒頭から映像に釘付けになってしまいました。
しょったんの心の支えになる人（或いは言葉）は、皆さりげなくて、或いはしょったんがそれをキチンと覚えているのかもしれないし、とにかく彼がそれらの人々や言葉を引き寄せているようにも感じました。
しょったんが奨励会の年齢制限に達しプロになることを諦めたことで、将棋が好きという初期衝動を思い出すと、まるで将棋の指し手のように、じわじわと運命が静かに必然になってゆくがごとく、運が手を差し伸べる展開は、決して派手な演出やシーンではないのですが感動的で、地味な展開だけに逆に巧さを感じました。
前情報を殆ど入れてなかったので、「えっ！？」って感じで大物俳優が出てくるのですが、それもあまりにさりげないので、今のって〇〇？みたいなのが何回かありました。
『運命は自分の手で切り拓く』というストーリーが多いなか、決して自分だけでは切り拓けない（それでも彼本人の態度が引き寄せているのですが）という描き方が、なんだか今の自分にはリアルでしっくりきました。
今作の松田龍平は、ドラマ『カルテット』で、やはり彼が演じていて好きだった別所さん思い出しました。
