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カランコエの花の8637のレビュー・感想・評価

カランコエの花(2016年製作の映画)
3.9
2回目+3回目。

世間ではBLや百合でヒューヒュー言っている人達がいる中で、周りにそんな人がいたら差別するという風潮は、矛盾だと思わないのだろうか。
現在Twitterでまた違う議論が繰り広げられている「his」も、観た経験が浅いからか僕はかなりリアルに感じた。この映画は学校生活での一幕だから社会的な問題にならないまま収まったが、いざとなれば裁判も辞さない世界線もあったはずだ。

7月7日の、叶わなかった願い。伝えられなかった暗喩。本当の"守る"という行為はあれとは違う気もする。
僕は隣で傷つけられて不登校になった人を何人も見てきたから知っている。一瞬の隙に貼られたレッテルで、3年間が無駄になっていく怖さを。
一度観て、もう一度コメンタリーを見返した時に沢山の発見ができた。

なぜ、彼女が主人公なのか。当事者を描かないからこそ、当事者の思いを唯一知るカットに出会った時に悲しくなる。カミングアウトするかしないか、選択する事すら相当な苦しみだっただろう。そして、当事者を描かないからこその感動的なラストが逆に映画的でもあった。画面から目を離したくなってしまう程には。

初めて観たときは疑問を持っていた。多感な時期の子供なら絶対"犯人捜し"するはずのこの話題を、何故教師は授業に取り上げてしまったんだろう。裏でどんな話があってあの授業に行き着いたのかは知らないけど。彼女の話を聞きながら、適当に相槌を打ったりしていなかっただろうか。

正直、ニュースで少し語られる問題だけを見て「もっと受け入れなければいけない」と思う事ってただの脅迫なのではと思っていた。それも裏返せば「ただ許容しておけばいいだろ」という適当な思考に繋がるから。
勿論今の状況とはまた違う。4年前の映画だからか、別の虚しさを感じた。


追記:急遽無料公開されたこの映画ですが、自分がTwitterで運営して結果も発表済の「#オールタイムベスト短編邦画」で断トツ1位を取って驚いていた矢先の配信だったので、もはや運命かも、と感じていました...
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