ぐるぐるシュルツ

静かなふたりのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

静かなふたり(2017年製作の映画)
3.6
沈黙の中で語り合う私は、
言葉でなく行動で示す人に惹かれる。
でも、あなたはどっちなの。

〜〜〜

パリを舞台に、
古書店で出会う老人ジョルジョと若い女性の、
短い間の恋を描く、フランス映画。

二人の会話は少なく、会っている時だって
ほとんど話さない。
場面展開もポツポツと区切られて、
時間を飛ばしながら、
進んできます。

途中何度も会話の音声だけ聞こえるシークエンスを挟みますが、
きっとそれらの会話自体、
本当はなかったのではないでしょうか。

彼女は強く想いを寄せてるが故に、
ふたりの沈黙の間に
一人で言葉を紡いで、
ノートに綴っていたのでしょう。
(ただ、だからといっても100%彼女の的外れな妄想・創作でもない気がします。
ふたりだけの時間や静寂の中で、きっと通じ合える想いがあると、僕はそう信じています)

そして、そこにこそ、彼女は愛を感じていた。
会話ではなく、行動の中に「言葉」を見つけていくことに。

それは、ジョルジョが呟いた「言葉じゃなく行動だ」という台詞に最初惹かれたのと、同じです。
また、
反核のデモに参加して声高に訴えるのではなく、
密かに、しかし確実に原発に影響を与えている、
アイスランド系ハッカーに親近感を抱いたり、電車を直接止めようとするのもそのためでしょう。

しかし、
後半になると、
実はジョルジョはその昔、思想活動家であったことが発覚してしまいます。
大きな声を上げる人たちです。
そこで、彼女は騙されたような、
裏切られたような気持ちになる。
それでも愛を与えたくて
彼女は寄り添おうとしますが、
老人は、口をつぐんでしまう。

最終的に、彼女はその沈黙の中に
拒絶の言葉を紡ぎ出して、
そこでノートを閉じる決意をするのです。
そして、新しく無言の愛を分かち合える人を見つけていく。

それを見届けたジョルジョは車内の中で、
何を語っていたのでしょうか。
日が暮れるまで、ずっとずっと、
言葉にもできない
静けさの中で。

やっぱり
「二人の年がもっと近ければ」
というのが切ないですね。
その言葉通りの意味の裏に、
ほんとうは、
諦めやごまかしや嫉妬や
寂しさや思いやりや愛情が
詰まっているようで。