鰯

バッド・ジーニアス 危険な天才たちの鰯のレビュー・感想・評価

4.7
ピアノ教室

苦学生のリンは数学の秀でた才能を認められ、名門高校に奨学生として入学する。入学直後に友人となったグレースの成績の悪さを見かねたリンは、学内テストでカンニングを手助けしてしまう。そこから、リンの周囲には「指導」を望む学生が集まり始める。

教室内だけのお話がこんなに躍動感がある壮大なエンタテインメント作品となっていて驚き。完全にぶっ飛ぶような体験でした。監督は、「スパイ映画を撮ろうとした」そうで、構成や演出はまさに米英のスパイ映画っぽい。尋問シーンや、敵(教員、試験監督)の視線を避けた巧みな動き、チームで「情報(答案)」を運ぶ連係プレーなど、終始ニヤニヤしてしまいました。あと、「助けなくてもいいやつを助けてピンチに陥る」展開とか大好物でしたね。
リンの成長ぶりも女スパイみたいでかなりグッとくる。初めはおぼこくて、性的にも未分化な印象。グレースとの関係も、「友情なのか恋愛なのかわからない」くらいの距離感。それが様々な試練を乗り越えて、後半には完全に大人の女性になる。シャーリーズ・セロンとかアンジェリーナ・ジョリーとかもうそういう類の映画を観ている気分にすらなりました。
ライバルにして、恋愛(?)関係にもなりそうな、バンクは正義感が強く、カンニングへの疑問を常に投げかけてくる。そんな彼との競争を経て、終盤の展開はもうミッションインポッシブルでも観ているような気分に。何これすごい
カンニングに挑戦するシーンは、スローモーションを多用したりペン先にカメラが寄ったり、笑っちゃうほど盛り上げる演出のオンパレード。これでもかという煽りに、無理やり興奮させられているような気分になります
笑えるシーンの入れ方も本当に秀逸。例えば、スポンサーの使い方。ペプシの缶が開いてグレースがカメラ目線で語りかけたと思ったら、それは演技の練習だった。とか、すごくないですか??あと、エンドロールの最後に流れる一曲には笑いが堪えられませんでした。あの歌詞考えた人、大好きです

面白さは抜群ながら、学歴社会や受験競争、経済的な格差といった社会問題も真正面から取り上げているのがたまらないポイント。カンニングという1つの罪を共有する中でも、各々が抱えている事情は微妙に異なる。住んでいる家や親との関係での苦しみをきちんと描いている。その中で、グレースだけはいまいち家庭の事情が窺い知ることができず、浅く感じてしまいました。ほかのメンバーを繋ぐだけになってしまった気がする
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