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はじめてのおもてなしのtsのレビュー・感想・評価

はじめてのおもてなし(2016年製作の映画)
4.0
観終わったあと、なんだかまるで緑鮮やかな初夏のように爽やかな映画だなぁと感動した。難民というドイツが近年抱える社会問題として注目されている題材であるにもかかわらず、難しさも説諭くささもまったくなく、国籍や宗教の違い、という大きな視点から、人と人との関係、家族同士との関係という形で、個人の違い(信念、価値観など)にまで落としこんだ、素晴らしい作品だと思う。自分の他者との接し方や、「他者」という境界の引き方などを考え直す機会をもらった気がする。

そして、とにかく脚本が秀逸で、テンポのよいシーンの切り替えだけでなく、セリフの掛け合いなどがスムースで、かつ、ユーモアもあり、これっぽっちももたつきのない展開で、最後まで楽しむことができた。加えて、登場人物のキャラクターがしっかりと組み立てられ、そしてそれがとても丁寧に描写されていて、一人ひとりが生き生きとしていた。

途中、ご都合主義のように感じる部分もあったが、この映画がコメディであって、人と人との関係性というものはお互いの価値観の尊重を通じて育てるものだというメッセージを、とてもわかり易い形で示してくれていたことを考えると、なんて素晴らしい映画なんだろうと思う。

この映画の最後も、「え、そこの描写しないんだ!?」と、あえて観客のお涙頂戴を意図した、直接的な感動シーンを用意しておらず(ように思える)、あくまでコメディに徹したんだなぁと好印象だった。

映画館で鑑賞している間、みんなが声に出して笑い声をあげていて、そういった意味でもとても親近感や一体感を感じられて、とても嬉しかった。
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