hirogon

判決、ふたつの希望のhirogonのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.0
レバノン内戦を背景にした民族・宗教・政治の対立を監督自身の体験に基づいて描いたお話とのこと。
ただし、監督は、”社会的メッセージを発したかったわけではない。人を描きたかった”とコメントしています。
レバノンの社会的背景を詳しくは知らなくても、「民族・宗教等の問題が背景にある」という程度の知識でも理解できる内容です。
本作は世界的に評価が高いようですが、誰もが自分の身に置き換えて考えられるような普遍的な人間ドラマであることもヒットの要因の一つ。

レバノン内戦が発生した背景やレバノンという国自体よく理解していませんでしたので、wikiなどで俄か勉強。
wikiによると、
レバノンは、第二次大戦後、欧米列強により人工的に作られたような国
民族・宗教がモザイクのように分布していて、モザイク国家の1つ
政治的にも複雑な状況があり、対立のネタは何かをきっかけにしていつ噴出してもおかしくない
レバノン内戦は、1975年~1990年に渡って続いた
、、、等々、そんな、民族・宗教・政治が複雑に絡み合った国がレバノン。

レバノン内戦後の首都ベイルートが舞台。事件は些細なことから始まります。

ヤーセルらは、違法建築の修理のため現場で作業を行っていた。
ベランダの配水管が原因で現場作業員に水がかかったのが発端。
この配水管の家の主が、トニー。

ヤーセルは現場監督で、イスラム教徒のパレスチナ難民。
トニーは自動車修理工で、キリスト教徒のレバノン人。

事件の発端から事態がどんどんと拗れていき、ついには国を二分するような裁判に至る過程に引き込まれます。
ヤーセルとトニーは、それぞれにレバノン内戦時に辛い経験をしていて、裁判で新しい事実が明らかになる展開も上手い。

トニーもヤーセルも、どちらにも足らない部分はあって、片方が一方的に悪いということではないのですが…。
暴力事件以降、トニーの奥さんの早産の件もあり、ヤーセルはかなり抑制的な対応をしています。
自分の行動に対してある程度の責任も認めているようです。
一方のトニーは、少し感情的な面と自己主張が目立ちます。
個人的には、ヤーセル側の気持ちで見ていて、ヤーセルの態度や対応は、”よく我慢しているなあ”と感じてました。


(以下、ネタバレ)
ーーーーーーーーーーー


裁判闘争の中、トニーがヤーセルの車のエンジンがかからないのを見て直してあげるシーンがあります。
拗れた状況になってはいるが、ヤーセルのことを人として心底嫌っているわけではないように感じるシーン。

法廷でレバノン内戦時のトニーの体験を知ったヤーセルが、彼を訪れるシーンは、二人の心が少しは通じたように思えるいいシーン。

そして、ラストの裁判の判決は?
裁判長は、判決に至る経緯を説明した後に判決文を述べる。
それは、希望の持てる判決だった。

邦題の”ふたつの希望”の意味は、ハッキリとは分からなかったので、ネットで調べた内容をコメント欄に記載。
hirogon

hirogon