たく

共犯者たちのたくのレビュー・感想・評価

共犯者たち(2017年製作の映画)
3.8
2008年の李明博政権以降、国家権力が介入して報道統制を敷いていく韓国のマスコミ界の実態を追ったドキュメンタリー。ジャーナリズムの死が民主主義の滅亡に繋がるということを、マスコミ内部からの告発というかたちで描いているのが妙に説得力あってゾッとした。

驚いたのが当時の韓国に政権批判の報道番組が多数存在してたってことで、国家権力の介入によって報道が骨抜きにされてもなお気骨ある記者たちが精いっぱいの抵抗をしていくところに韓国パワーを感じた。
チャプターの訳語に「マスゴミ」って日本のネットスラングを付けちゃうのはどうかと思ったけど、同じ報道の骨抜きとはいえ、権力に忖度して批判的報道を自主的に控えちゃう日本のマスコミとは構造的にえらい違うなと思った。日本のローカル局が権力の腐敗をあばくドキュメンタリーの「はりぼて」が、闘いを貫き通せないまま終わってたのをちょっと思い出す。

セウォル号沈没事件のとき何であんな救助活動が杜撰だったのか不思議だったんだけど、背後に強い報道規制があったんだね。右翼的な市民が政権寄りのジャーナリズムを支持する場面があって、これは日本もアメリカも同じだと思った。
本作の監督である元MBCジャーナリストのチェ・スンホがしつこく突撃インタビューを敢行していくのが、マイケル・ムーアばりの無理筋な演出っぽくてちょっと笑っちゃった。
本作の大ヒットにより、後にチェ・スンホ本人がMBC社長に就任したという事実を知って驚いた。
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