りっく

ジョン・ウィック:パラベラムのりっくのレビュー・感想・評価

4.1
キアヌリーブスを観ていると、不憫という言葉がよく似合う。本作でも堂々と主演を張っている代表シリーズの3作目だというのに、車に連続で轢かれるわ、砂漠で喉が渇きすぎて限界の状態でハルベリーに残りの水でうがいされて絶望するわ、吹っ飛ばされ続けてひたすらガラスケースに突っ込むわ、もはやサンドバッグのように高所から落下するわで、相変わらずの雑で乱暴な扱い。

でも逆に言えば、それはキアヌリーブスという、間違いなくスターでありながらも、どこまでも謙虚な俳優の飾らなさ故であろう。意識せずともどこか滲み出てしまう、みすぼらしさや、枯れた味わい。それは決して老いではなく、B級臭でもなく、その唯一無二の存在を愛でるような気持ちになってしまう。

だからこそ、劇中でも思わずカタコト萌えしてしまうスキンヘッドの寿司屋然り、東南アジア系の強者然り、殺し合う中にもジョンウィックのファンである気持ちを抑えきれず、相見えることができて光栄ですというスタンスで戦い、そういう男と男の戦いには、作り手も敬意を払って尺をたっぷりとかけてくれ、思わず笑みがこぼれてしまう。

そんな午後ローで放送するにぴったりな本作であるが、そんな外面にもかかわらず、キアヌが繰り出す数々のアクションが驚くべき境地に達しているのだから堪らない。厚い本一冊で攻撃と防御を瞬時に行い大柄の相手を倒す図書館のシーン。様々な刃物が両脇に展示されている通路で繰り広げられる目まぐるしい格闘シーン。そして、無法地位と化したホテルでありったけの装備をして銃撃戦を展開し、さらに強力な銃を一度武器庫に取りに行き、2つの銃を使い分けながら最強の防弾を施した敵を次々に撃ち殺すシーンは、きちんと装填する間も計算されている見事なガンアクションだ。

もはやストーリーはあってないようなものである。特にハルベリーが登場する中盤の展開は一気に推進力を失い、全く褒められたものではない。「未来世紀ブラジル」のような管理社会を目指すもアナログお役所感満載の近未来を舞台に、「君よ憤怒の河を渡れ」のように都心を爆走する馬にキアヌをしがみつかせ、「燃えよドラゴン」のように鏡ばかりの部屋で格闘を繰り広げる。そんな作り手が好きなものをぶち込んだ世界観も、必ずしも成功しているとは言い難い。

だが、そんなことを期待する方がお門違いであり、「スピード」「マトリックス」(ローレンスフィッシュバーンとの終盤のやり取りは胸熱)とはケタ違いに人間的な魅力に溢れるキアヌの存在と、世界でもトップクラスのアクションを次々と見せてくれる冒頭と終盤の展開は、この手のジャンル映画に求める期待値を120%応えてくれる、魅力たっぷりの作品である。
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