うるぐす

パンとバスと2度目のハツコイのうるぐすのレビュー・感想・評価

4.3
【片想いの美しさを描くこの映画を観て、深川麻衣への片想いは続く。】
初主演映画素晴らしかった!!!

………
日常に始まり、日常に終わる。
日常を揺るがすような大事件なんてない。妹が居候として転がり込んでくるか、せいぜい洗濯機が壊れるくらい。物語は平坦な装いではあるけど、心理描写はとても細やか。
まず、まいまいの初主演映画が、こんなにも素敵な映画に仕上がったことが、とてもとても嬉しい。それは、アイドルグループの人気メンバーを起用したのではなく深川麻衣という人間を起用し、彼女の人となりが脚本に乗っていることもあるだろう。
まいまい毎日マイペース。
市井ふみ(深川麻衣)はとことん同じペースで暮らす。朝は3時半に起きてパン屋さんに行き、仕事が終わるとバスの洗車を見てから、夜になるときまって目薬を差す。
始まることは終わることにつながる。そして独特の恋愛観。と言っても、ふみの感覚はすごくわかる。「一生愛し続ける自信も、愛され続ける自信もないから、結婚できない」と2年付きあった彼氏からのプロポーズを断ってしまう。
それはふみ自身が、かつて、大好きでずっと続けていた「絵を描くこと」をやめてしまったことが大きいのでは、と思った。つまり自分の「好き」も誰かの「好き」もいつかは終わりが来てしまうこと。だから、結婚はできないと思ってしまう。この流れるような描写はとても見やすい。
この映画の大きな役割が「目」だと思う。
ふみが緑内障で、毎日目薬を差さないと、いつか失明してしまう。という設定がなぜあったのか考える。そして、唯一目薬を差し忘れたシーンは、たもつ(山下健二郎)と二人で飲みに行って帰ってきた場面。初恋の人との再会に、お酒と2つの意味で酔ってしまったふみは劇中初めて目薬を忘れる。妹・二胡がいなければ失明へと一歩近づいていたのだ。二胡のファインプレー。あと、ふみにこ姉妹最高でしたよね。本当に姉妹にしか見えなかったです。少し話が逸れました。二胡がふみの絵を描くときにふみを見る「目」がやたらアップになってたことからも読み取れますね。と同時に、ふみには「失明」という来ないであろう終わりも存在することを予兆させる。ここもまた、ふみの恋愛観につながって来るのではないか。
そして、恋愛において、終わらないためには始めないこと。両思いになってお互いを知ると嫌いな部分も見えてくる。ずっと好きでいるためには、好きだと言わないことだ。片想いのままい続けることだ。こんな風に、片想いを、成立していない恋を肯定した映画は見たことがなかった。人間、やっぱり不安になるから、言葉や約束に安心したくなるだけなんじゃないか。それが「孤独」なのではないか、と思いました。
片想い万歳。

パン屋でバイトしてる僕が最後に言いたいのは、フランスパンはめちゃくちゃ硬いので殴られると木の棒で殴られるくらい痛いよ、てことです。
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