Habby中野

リズと青い鳥のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の描写、世界で最も完璧で美しいシーン。校舎前の階段に座り込むしぐれ。足を伸ばす一瞬の予備動作。俯きながら誰かを待つ。来た!と思えば別の人。しばらく待つと、ついにのぞみはやってくる。長い首を少し前に出しながら飄々と歩くのぞみ。後ろを丁寧に着いていくしぐれ。青い羽を見つけた時、階段を上りきった時、ふと視界から消えるのぞみ─不安感─、そしてすぐに視界に戻る。ここまでのほとんど台詞のない数分は、決して言葉では表せず、そして非時間的なあらゆる世界の(もちろん、しぐれとのぞみ二人の世界の)状況を描いている。二人の人物と場所、音、色、空気感。それが世界を描写する。なんて美しい。
絵本の物語から生まれた曲の演奏を掛け合う二人。物語と現実が重なり合うだけではなく、交差し、擦れ合う。それは冒頭の描写に呼応しながらも、とらわれず、さらに遠い場所へと飛んでいく。学校、部活、吹奏楽。しぐれと、のぞみ。線とアニメーション。しかし決して狭い世界ではない。身動きするだけでぶつかりそうな距離感で、でも無限の広さのある世界で。この世界の片隅は、愛を叫ぶ中心でもある。ぶつかったら、先に叫んだ方が奢ってもらおう、「ハッピーアイスクリーム!」。
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