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リズと青い鳥のnagashingのレビュー・感想・評価

リズと青い鳥(2018年製作の映画)
5.0
永遠に見ていられそう。というか一瞬たりとも目が離せない。赤、青、黄などの色彩が暗示的に配置され、局部へのフェティッシュが炸裂した細やかなしぐさに、官能的な音のつらなりが精緻に繊細に同調。比喩でなく森羅万象が息づく。美術と撮影が実写への志向を高度に実現する一方で、作画と音響は無機物にすら豊かな感度と反応を付与していく。アニメ的な記号性を慎重に回避しつつも、アニメでしか成立しえない嘘と誇張が織りなす表現の練度。冒頭と結尾の反復が逆転の構図をあざやかに浮かび上がらせるが、彼女たちが最後までならんで歩くのをやめなかったことそれ自体がまた感動的。変わっていくものを祝福し、まだ変わらないものを慈しむ。離別と共生が美しく絡み合った道を進む少女たちを、愛と共感に満ちたまなざしが控えめに見守る。鳥やフグなどに過去作へと遡るイメージを散りばめながら、一貫したテーマを正しすぎるほどに深化させていく、現時点における山田尚子の集大成。
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