グラッデン

あの頃、君を追いかけたのグラッデンのレビュー・感想・評価

あの頃、君を追いかけた(2018年製作の映画)
3.4
「本当に幼稚」

本公開時にタイミングを逸していたところ、新宿武蔵野館の限定公開で滑り込みで見てまいりました。

台湾オリジナル版と本作の両方を鑑賞した弟に事前レクチャーを受けておりましたが、想像以上にオリジナル版からのローカライズと時代更新を放置した脚本に驚きました。

推測ではありますか、台湾での上映、プロモーション等を意識した「大人の事情」があるとは思います。しかしながら、こうした未改変がもたらす影響は非常に大きく、別の意味での改変に繋がったのではないかと考えております。

なぜなら、本作のコアが「青春の輝き」を題材にした作品だからです。誰しもが経験したであろう学生生活という日常の中で育んだ仲間たちとの絆、かけがえのない時間を描くことで眩いばかりの輝きを見せていきます。

もちろん、こうした内容は、ある程度の国や時代という枠組みを超えた普遍的な価値観を持つものだと思います。しかし、本作が台湾の若者から絶大な支持を得た傑作であるのは、舞台となった1990年代の「時代の空気感」を作品世界の中に落とし込んだからだと思います。

例えば、同じように「青春の輝き」を描いた作品としては、今年であれば『ちはやふる』完結編と『坂道のアポロン』がありましたが、前者であれば「競技かるた」、後者であれば「ジャズセッション」という要素が登場人物たちを繋ぎ、物語を推進する役割を果たしておりましたが、本作においては「日常」と「空気感」がその位置にあるのではないでしょうか? その意味では、個人的には冒頭に述べたようなローカライズを実施してほしかったと思います。

一方、こうした違和感を吹き飛ばす齋藤飛鳥さんの最強ヒロインぶりが光る内容でありました。どこか達観したモノの見方をしながらも、誰よりも人のことを考えて言語化できるヒロインは、乃木坂46の中にいる彼女の立ち位置にも共通する部分があると思います。
適切な喩えではないかもしれないですが、00年代のノベルゲームを彷彿とさせる台詞回しで、どうしても演技してる感触を与える場面はあるのですが、それ以上に自然体の生っぽさもある立ち回りは良かったです。

ヒロインが輝くことに特化したアイドル映画としては合格点だとは思うのですが、本来の青春映画としては何とも判断が難しい作品ではないかと。