TaichiShiraishi

ファイティング・ファミリーのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます


実によくできたスポ根実録映画。



プロレスを知っている人もそうでない人も間違いなく楽しめる分かりやすい面白さと感動に満ちているが、この映画に描かれる物語の在り方自体がプロレスというものの本質を表しているのが上手い作りだ。

この映画はWWEで活躍している女性プロレスラー・ペイジことサラヤ・ジェイド・ベヴィスの伝記映画にはなっているが、調べてみると劇中で起きることと史実は結構違っている。

それにも関わらず『ファイティング・ファミリー』の冒頭には「True Story」という字幕が出る。事実を脚色した場合は大抵「Based on True Story」と出ることが多いがこの映画は自信満々にこの話は真実だと語ってみせる。

この姿勢こそがプロレスというものの本質に近いと思う。

虚構の部分があってもやっていることはすべて真実。例え段取りがあって戦っていても、体に負うダメージ、そして対戦相手との信頼は本物だ。

プロレスは1人ではできない。映画も1人ではできない。
この映画において主人公ペイジのライバルの美人レスラーたちも厳しすぎるコーチも、彼女と同じオーディションに落ちた兄も、本人役で出てくるロック様も、ペイジとぶつかるものの誰ひとり悪役ではなく彼女の成長物語に寄与する存在になっている。

特にあのただの美人なだけにしか見えない同僚たちが実は・・・という場面は感動的でスカッとした。女の敵は女じゃないし、ていうかプロレスの世界に敵なんていないし。

兄貴絡みの描写は全部よかった。持たざる者の悲哀がモロに出ている。でも教えていることはWWEと同じだし、WWEには絶対にできない弱者の指導が出来ているのが立派なんだけど、そうは思えないというのがめちゃくちゃ気持ちわかる。

各キャラが自分自身のおいしい場面を作りつつ作品の面白さに的確に貢献している。特に身を持ち崩した元プロレスラーのコーチ・モーガンを演じるヴィンス・ボーンはキャリア最高レベルの名演技だった。
身長だけならロック様と同じくらいなのがリアル。

握手して落第というプロレスの世界の非情さもいいな。

ロック様も本人役だけどちゃんとこの作品にあったロック様になっていた。この映画だけ見ても彼のこと大好きなる人多いんじゃないかな。

そして相変わらずニック・フロストは最高。

そして映画のラストはベタベタながら誰もが諸手を挙げて喝采したくなる痛快で感動的な展開を迎える。

こうなるとわかっていても最高に面白いし、むしろこうなってくれと望んでいることをしっかりやってくれるのがありがたい。ここもプロレスっぽい部分。



劇中にも全くプロレスなんて知らなかったのに終盤にはのめり込んでいるキャラがいたが、プロレスを知らない観客が見ても楽しめる上に最後には実際のプロレスも見てみたくなるのではないかと思える快作だった。
TaichiShiraishi

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