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アンダーグラウンド 完全版のarchのレビュー・感想・評価

4.8
かつてここに国があった。

かつて存在したユーゴスラビアという国(舞台は現セルビアのベオグラード)で第二次世界大戦からユーゴ内戦までの期間をマルコとクロの友情と軋轢を中心に描いた叙事詩となっている。

第二次世界大戦のナチスに全力で反抗するクロとマルコの姿はなんともエネルギッシュであり、その姿を見るだけで面白いのが本作である。大抵こういった東ヨーロッパの歴史物は暗かったり、アート重視の散漫さで分かりづらい印象を受けるが、しっかり軸として2人の男と一人の女の物語があり、強烈な個性とユーモアがある為に、楽しめる作品に仕上がっているのは間違いない。
特に舞台から彼女を誘拐するシーンは笑うしかない。お気に入りのシーン。

長い5時間以上の作品だが、タイトルの「アンダーグラウンド」を指す展開は後半にやってくる。マルコの策略で未だに戦争は終わらず、クロは地下での待機を命じられている。
地下でひとつの大きなコミュニティが生み出される奇妙さや、果たして本当に地上ても「戦争」は終わったのかという問の投げかけが、この奇妙な状況を面白がらせる。
全てが終わった後に地上に出てくる地下の人々だが、物語の結末にはユーゴ内戦があり、戦争はまた始まってしまった。
地上に出てみると国が無くなっているという悲しさはイヴァンの姿から痛烈に伝わってくる。


5時間以上の作品ながらも常にラッパが鳴り、軽快かつ壮絶な物語は勢いを失わずに進む。見事な作品でした。
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