みかぽん

エンテベ空港の7日間のみかぽんのレビュー・感想・評価

エンテベ空港の7日間(2018年製作の映画)
3.3
ハイジャックのその後の試金石となる象徴的事件は、以下の二件と思っている。
一件は言わずと知れたアメリカの同時多発テロ(4機同日のハイジャック)で、こちらは保安検査強化のレベルでは到底なく、世界のその後の方向性まで変えてしまう一大事件だった。
もう一件は今回の映画で描かれた事件で、犯人の要求に断じて応じない決断(特殊部隊派遣による掃討作戦)だ。
この顛末は世界を駆け巡り、ハイジャックは割りに合わない無謀と知らしめて、以降、各国はこれに倣い、こぞって特殊部隊編成に力を注ぐ結果となった。

本作は時流なのか、「どうだ敵をやっつけだぞ!我々は凄いだろう」とは一線を画す目線で作られており、イスラエル政府と乗っ取り犯とのパートはほぼ五分五分・・・なんだけど、そのせいなのか何なのか、ぼんわり締まらない展開に終始。組み立ての悪さを全面に晒し続ける間延び感にもへこたれた(何というか、意図する部分を攻めきれてない感じなのだ)。

犯人の一味であるドイツ人は、混成するPFLP(パレスチナ解放人民戦線)の兵士にたしなめられまくりな腹の座らなさっぷり。と言うのもエンテベ到着後、PFLPが解放する乗客と人質にする側(イスラエル国籍者=ユダヤ人)を分けは始めると、「話が違うじゃないか」と動揺し始めたり、その後も「政府との交渉が決裂したら人質を殺せ」と言われれば、「ドイツ人がユダヤ人を殺せばどういう事なのかを分かってるのか⁈」とうろたえる。

要するに、彼は生真面目で気弱な理想主義者で、ドイツにそのまま居てレノンのイマジンなんかを熱唱しながら世界平和を唱えているべき人だったのだ(語弊があったらすみません💧関心もないのに口先だけで知ったようなことを言う人よりは、なんぼも尊いと思っています😢)。

犯人掃討はあっけなく完了し(意図的にドラマチックに演出していなく、実に淡々とした感じ)作戦を決断した首相のラビンはその後、平和外交推進に尽力するものの暗殺され、和平は頓挫。後に政権に就くネタニヤフ(の兄は前述した作戦で、部隊唯一の死亡者)は対パレスチナ強硬派であり、今ある状況は周知通り…😞。

後味は悪いですが、近代史の振り返りが出来、色々考える機会は持てる作品です😞😞。
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