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パペット 大騒査線 追憶の紫影のdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.7
【深呼吸してから見てね】

いやいやいや・・・。
これはどういう方向で評価しようかねという「困ったちゃん」ですな。
というのも、表向きは皆さんの想像通りの「超どストライクなB級映画」です。アカデミー賞の「ア」の字もかすらないくらいの。
そもそもセサミストリートで育った世代にとっては、パペットが絡んでくる時点で真面目な話にはならないことは理解しているし、そっちに舵を切るには無理があることも承知している。それならばどっち向きに舵を切るのかな?というところだと思いますが・・・。
ある意味「潔い」。
ここまで振り切って「お下品」なところまでいくと、もはや「TED」すら可愛く見えてくる。かといって「TED」とも根本的に違うんだよね、作りが。

TEDも基本は「お下品」なんだけど、どこかかわいらしさのほうが先立っているというか、キャラクター勝ちしている部分が大きいと思うんだけど、一言で言えば「人間がやっても成立しそうなお話しを熊のぬいぐるみに置き換えたら意外と面白くなりました」っていうタイプなんですよ。それこそアメリカで80年代にブームになったグロウアップ系映画の「ちょっぴりH」テイストが脈々と流れているのが「TED」なんですね。だから「お下品」だけど「下品」ではない。

じゃあこっちは?ってなりますよね。
分かりやすくいうと「人間がやっても~」がTEDだとするならば、「人間がやったらコメディどころかありとあらゆる放送コードやら映倫やらに引っかかりまくりで上映時間の3分の2はモザイク」という奇跡の映画にもなり得たかもしれない。
実はこの作品のそういうポテンシャルというか狙いみたいなもんはヒシヒシと感じるんですよ。
―――彼らは人間と同じ世界で同じように生きている。共存とまで言えるかは分からないけど、それでも「同じ世界」で生きている。で、殺されれば死ぬ。ぬいぐるみだからそもそも「生」も「死」もないとかそういうフワフワした設定ではなく、普通に死ぬ。
だから彼らが殺されれば事件になるし警察も動き出す。
っていう前提でね、彼らが殺されるシーンが普通に映し出されるわけですよ。だってパペットだから。
銃で頭をブッ飛ばされれば、血しぶきの如く綿を撒き散らして頭が破裂するし、犬に喰いちぎられれば断末魔の叫び声を上げながら体がバラバラになって死んでしまうんですね。これを実写(勿論CGや特撮)でやったとしたら、相当なトラウマムービーになるんです。かと思えば、主人公の事務所に訪ねてきたお色気ムンムンのパペットの誘惑に負けた主人公フィルは、彼女を押し倒してS●Xを始めちゃう。でもモザイクは一切なし。だってパペットだから。
で普通こういうシーンてギャグっぽく2~3秒入れればいいかなって所だろうけど、結構本気でヤっちゃってます。で、見事に果てます。部屋中に撒き散らします(何を?それはご想像にお任せします)。
こんなの普通に人間がやったら完全に「裏ビデオ」の領域ですよ。さすがに最初は笑ってた後の席のお姉さん達から笑い声が消え始めた・・・。

でもね、違うんです。これは基本的に笑う映画なんだよ。何もそういうシーンでニヤニヤ笑えとかそういう意味じゃなくて。
根本的に「こんな事、人間使って出来ね~だろ」ってことを、ためらいもなくパペットで表現してみたらこんな映画になりましたってだけの話なんです。
途中ノーパンのパペットが警察署で足を組み替えた瞬間にスカートの中が丸見えになったシーンなんてシャローン・ストーンのまるパクリなんです。いや、それどころかモロ見えな分だけ本家を超えていったかも(笑)。でも結果的にはそのスカートの中身が事件解決の糸口にもなったから「ガン見」しておいてよかったと(男の悲しいサガ)。

ストーリー自体は後から取って付けたようなもんなんです、きっと。
でもそこはそれほど重要じゃない。
この映画のポイントは「アニメでもなく、CGでもなく、本当にパペットと人間が作り出した限界すれすれの馬鹿な一本」というところです。勿論褒め言葉として。

お気楽に「B級バディームビー」でも見ようかななんて思ってたら、相当意表を衝かれる可能性はあります。全編シュールテイストなコーティングをしてありますが、見方によってはとても攻めた映画だし、結構面白かったと思います。

・・・ただ、見る人を選ぶ作品ではあります。パペットとはいえ中々のことをやらせてますんで。
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