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志乃ちゃんは自分の名前が言えないのplantseedsのレビュー・感想・評価

5.0
『伝えたい。だけれど、伝えられない』

完全ノーマークの作品でしたが、内容を知って即座にレンタル、鑑賞。
この内容は、本当に自分にとって他人事ではないんですよね。

自分も何を隠そう、「どもり」。吃音がある人間なので、主人公の志乃ちゃんの気持ちは痛いほどわかるし、からかわれた経験がたくさんあるので、本当に他人事ではなかった。
(自分の場合は志乃ちゃんほどの症状ではなかったのが救いで、今では自分も吃音のことを受け入れて、ほぼほぼ日常生活に影響はなくなっています)

一定の人数こういう症状がでる人がいるのは事実ではあるのですが、こういった症状に初めて触れる人は、物珍しさからこの物語の菊池のようにからかってしまう人もいるんですよね。

本人はからかっているつもりかもしれませんが、言われている本人は表に出さないだけで、本当は嫌なんですよね。
そんなことを思い出してしまいました。

このことだけに限りませんが、自分の発言が人にどういう影響を与えるのか。
その部分の想像力はちゃんと働かせるといいますか、心ない言葉が人を傷つけていないかは注意すべきだと思いました。

志乃ちゃんの、「伝えたいことがあるのに、伝えられない気持ち」。
本当にもどかしいのですが、自分の気持ちを表現できない葛藤。
わかるというと、浅い気がしますが。
すぐに自分の気持ちや感情を素直に言えることは、当たり前だけれども、当たり前ではない。
そんなことにも、気づかせてくれます。

そんな自分が嫌で、仲間、みんなと向き合うことから逃げてしまった志乃。
確かに良くないかもしれないです。しかし、この苦痛は、吃音の辛さを経験した人にしか分からないというか、
繊細な志乃ちゃんにとってはどれほどつらいことだったか。
「逃げ=よくない」と、一色淡にくくれないと思いました。

書ききれないですが、個人的に本当に胸に迫り、
感じることがたくさんある作品でした。
登場人物の繊細な感情の表現が素晴らしいと思いました。
重めのレビューになりましたが、読んでいたただいてありがとうございます!
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