ケイ

未来のミライのケイのレビュー・感想・評価

未来のミライ(2018年製作の映画)
2.0
細田作品は一応全作見ているが、はっきり言って、高校生ものならともかく、幼児(と、その親)を題材にするのはもうやめた方がいいと思う。アニメーションとしてはよく観察された子供の動きの再現度がすばらしく、見ていてほのぼのするのだが、親と子の関係において、細田監督が描く物語には絶望的なほどの無理解と無意識の冷たさがあり、一人の母親として、なんとも言えず気持ちが落ち込む。

おそらく4歳くらいと思われる主人公の男の子・くんちゃんは、『ポニョ』のそうすけ並に動きがリアルでかわいい。ただ、この年頃の男児とはかけ離れた声がネックで、せっかくの見た目のリアルさが台無しになっている。
生まれたばかりの妹への嫉妬や、大人たちの目が突然自分から離れていく寂しさなど、くんちゃんの中に吹き荒れる嵐もリアルではある。けれど、荒れるくんちゃんの中にある寂しさを最後まで両親が理解せず、ファンタジーの中で過去や未来の人々と出会うことでくんちゃんが自ら自分の問題を乗り超えていく展開が、くんちゃんと同じくらいの男児の親として、とてもとても哀しかった。寂しさを解消してあげられなくてもいい、でも、寂しいよね…の一言があれば、あるいはせめて「くんちゃんは私の宝物」というセリフがくんちゃんの目を見てのものであったら良かったのに、と思う。

親にも子供の頃があったということ、赤ちゃんにも大人になる未来があるということ、人と人の縁が作る大きな時の流れの中に自分もいるのだということ。それらを知り、過去と未来の真ん中で生きていくことは素晴らしいが、小さな子供にとっては「いま」は「いま」であり、過去も未来もなく、「いま」愛されている実感が必要なのではないか。本作のくんちゃんは、幼児ではなくむしろ時々出てくる高校生の(どことなく不機嫌な)くんちゃんであった方が、万人に“自分ごと”として見られる作品になったように思う。
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