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赤い天使のmajiziのネタバレレビュー・内容・結末

赤い天使(1966年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

昭和十四年、西さくら(若尾文子)は従軍看護婦として天津の陸軍病院に赴任するところから物語は始まります。

最初の方は、
え・・・なにこの聖母で娼婦みたいな男の理想を具現化したような妄想女性像は・・・と、ドン引きでした。

最後まで観ると、もしかしてそういうことではないかも?
と思えたので最後まで観て良かったです。

戦争映画ですがほぼ病院が舞台。
西さくらが途中で転属となる野戦病院は、傷病兵が毎回おびただしい人数で運び込まれます。
物資不足により治療とは名ばかりの応急処置程度で、手足の切断をじゃんじゃんやる始末。大変グロいです。

こんな調子なので、兵隊さんも医師もみんな病んでます。
極限状態での男性の弱さや脆さが顕著で、女性たちは時に傷つけられつつも必死で対応します。

さくらは強靭な精神力の持ち主なのか、とにかく欲望をぶつけられても、今自分ができることを誠心誠意、必死でやり通します。

そして、一人の医師を好きになりますが、彼は外科医としてのプライドから手足切断ばかりの毎日に心を病み、モルヒネ漬けになっていました。しかもそれが原因で不能に。

しかしさくらはそんなことで彼を諦めません。
そしてこれまでの患者同様、性愛によって彼を救うのです。

ここまでくると、ファンタジーかよ!って思うのですが、この厳しい戦時下、男性にとって女性の存在は光であり、癒しであり、また救いであったという事実が、西さくらという人物に投影された女性賛歌なのかな〜とも思えました。

終盤は、中国側の娼婦へのコレラ菌ばら撒きによる集落での蔓延や夜襲、身ぐるみを剥がされた多くの死体など、リアルな描写が多く悲惨です。

ついそこまで中国人が来るぞー!って時に、医師とさくらが部屋でイチャイチャして
「軍服を着てみるか?」などとコスプレやってる場合じゃないだろって感じなんですけど、若尾文子の軍服姿がもうめちゃくちゃ可愛いのです。
いや、監督やっぱりこれがやりたかっただけじゃない?と思ってしまうレベル!

とはいえ、こんなおふざけな場面でも
今度は男に生まれたいか?という医師の質問に
さくらは「今度も女がいいわ」って答えるんですね。

だからやっぱり、あの戦争を一緒に戦い抜いた全ての女性への敬意が込められていたように思いました。
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