うえびん

万引き家族のうえびんのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.3
家族とは何か

是枝監督が追い続けるテーマ。毎作、興味深く見続けている。著作や対談本も数冊読んでいて、作風の背景を知り、考えに共感するところも多い。本作も劇場公開時すぐに夫婦で鑑賞した。だけど、あんまり印象に残っていないので再度鑑賞。

うーん。後味が悪い。
安藤さくら、リリー・フランキー、樹木希林の演技はさすが。だから、疑似家族は、本当の家族のように、疑似ということを忘れて見れてしまう。だけど、疑似の理由が分かると、その形成過程に疑問符が浮かんで離れない。もっとケンカしたり、もっとギクシャクしたり、もっと互いに疑心暗鬼になったりして日々波風が絶えないんじゃないかな。一人ひとりの背景を知るほど、勝手に膨らむ想像と作品での家族の描かれ方のギャップが大きくなってしまって、最後まで埋まらなかった。

試みとしては面白い、頭で考えるとそう思う。だけど、作品世界に入り込もう、登場人物の心情を感じ取ろうとするほど、この人たちのこの家族像ははあり得ないと思ってしまう。ドキュメンタリータッチの作風とのアンマッチを感じたんだろうか。是枝監督だから、僕が抱いたような家族の固定概念にくさびを打ち込もうとの意図が込められているのかもしれないとも思う。

善と悪、親と子、男と女、生と死、善い家族と悪い家族、人が陥りがちなクリアカットな二元論。そのあわいやグレーゾーンが、もう少し丁寧に描かれるとギャップが小さくなったかもしれない。是枝作品が大好きだからこそそう思った。
うえびん

うえびん