ぐるぐるシュルツ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

4.7
好きなものだから、好きなだけやりたい。
好きなものだから、守りたい。

〜〜〜

タランティーノ最新作、しかもブラッドピッド×ディカプリオ、しかも舞台は在りし日のハリウッド。もう最高だったぁ……。

本当にタランティーノの映画愛が溢れすぎてて、観ているこっちがこそばゆくなる。車でただただひた走るブラピ、長回しのウェスタン映画、爆音のオールドロック、もうそれやりたいだけでしょっていうカッコいいシーンが、
たんまり観られる。お得です。
いっちょまえに痺れます。

〜〜〜

全盛期を過ぎたリック・ダルトンのもがきや哀愁は、今のハリウッドの現状とも少し被さっていく。
もちろん、僕ら一人一人とも重なる。
焦りや不安、うまくいかない。涙ぐんだり、自分にキレたり、弱音吐いたり、つらかったりする。それを相棒で身代わりであるスタントマン(演じるのは全世界のスター)が、飄々と、それでも真摯に支える。
その姿に心打たれる。
それでもって最高の友人は
「努力している」ってふざけて応える。
あぁ、これ、
パルプフィクションの名台詞でもあったよね。

一方で、自分の初の大出番をスクリーンで観て喜ぶシャロンの姿は、そのまま映画の光でもある。
自分の演技で観客が湧くのを観て、キョロキョロニヤニヤする彼女。あの一連のシーンは終始幸せしかない。悪意も隙も闇も暴力なんて必要ない。
そんな彼女が、子供を身篭ったまま殺されるという史実の事件。
残酷な事件。
ハリウッドの歴史すら変えてしまったかもしれない事件。
そんなクソッタレで、
しゃらくさい悲しい史実を
タランティーノは、
ハリウッドの映画の力で、真っ正面からぶっ倒します。

もう、めちゃくちゃかっこいいじゃん。

「リアルじゃない」とか
「絵空事に過ぎない」とか
「現実を見てない」とか
そういう声なんて気にもせず、
言い訳もしない。
逃げも隠れもしない最高のフィクションで、
ぶっ倒す。
ユーモアたっぷりに。

そして最後、
ハッピーエンドの余韻の中で、
あの限りなく混じり気のない、
心くすぶる「もしも」の世界に対して
恭しそうに敬意を持って接するディカプリオ。

それは現実の向こう側のフィクションかもしれないけれど、
なんだか楽しそうで
眠るのも忘れるような宴に、
僕らも誘ってほしいよな。
門の向こうから手招きされて、
それが開く瞬間。

〜〜〜

グダグタ笑うだけじゃなくて、
しっかりハラハラする。
このバランス感、心地よい。
文化も国も時代も違うのに、
あんなにキラキラしている。
そしてエンディングの、
シークレットトラックのような
『バットマンのテーマ』。
ロック・スターが大好きなやり方。
最後の最後までニヤニヤが止まらない。
この、
だれかと好きなものが一緒と知って、ただただ嬉しい感じ。
それを、みんなで共有できて無性に嬉しい感じ。