だいすけ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのだいすけのレビュー・感想・評価

4.0
レオナルド・デカプリオとブラッド・ピットが並んでるだけで画の力が物凄く、とても興奮した。この二人による夢の共演がなかったら、160分の長尺かつスローテンポで、しかも終盤まで事件が起こらない本作は途中で飽きてしまう人もいるかもしれない。二人の絶妙な掛け合いはずっと観ていられる。

映画を鑑賞した後に知ったことだけど、本作は実際の事件をモチーフにしているらしい。これはアメリカでは非常に有名な事件だということが分かると、本作の構成も腑に落ちる。日本人の僕からすると妙に間延びしたように感じられた時間感覚は、凄惨な事件を終着点にして逆算された時間で、いわば「焦らし」のようなものだろう。つまり、アメリカ人にとっては極限的なサスペンスが最初から担保されていたわけだ。

ただし、実際の事件とは結末が異なる。本作の結末は、いわばクエンティン・タランティーノによるマンソン・ファミリーへのリベンジである。終盤まで珍しく監督の代名詞であるバイオレンスが息を潜めていたが、要はリベンジのために温存していたのだ。

ところで、本作にはもう一つのリベンジが存在する。それは、落ち目の俳優リックと、スタントマンのクリフによる映画人としてのリベンジである。二人は終盤で「悪党」であるヒッピー集団と対峙し、奴らを「ヒーロー」として成敗する。落ち目だった彼らはさながら第一線のハリウッドスターのように活躍するのだ。そこには、「映画やテレビで殺人を教えた業界人が悪だ」と吐き捨てるように言ったヒッピーに対して、「これがエンターテイメントなんだよ文句あるか」という監督の反論がうかがえる。そして何より、ハリウッドはまだまだこれからだという宣言のようにも思える。

以上のように、本作はハリウッドによる二つのリベンジの物語だ。なぜ超大物俳優による共演が実現したかと問えば、それはおそらくハリウッドのリベンジは、ハリウッドを代表する者によって成されなければならないからだと思う。結果的にすごい映画を観ることができて満足。
だいすけ

だいすけ