えいがうるふ

グッバイ、リチャード!のえいがうるふのレビュー・感想・評価

グッバイ、リチャード!(2018年製作の映画)
4.5
デップ主演ならではのヤサグレ版「今を生きる」といった印象。あるいは、私の大好きな映画「死ぬまでにしたい10のこと」のミドルエイジ男性版か。
設定としてはよくある余命カウントダウン終活ものだが悲壮感はなく、チャプター分けにより淡々と進行していくストーリーは軽快で洒落ていた。人によっては眉をひそめそうな教育者としてあるいは父親としての振る舞いも、限られた残り時間で自分の生を精一杯全うしようと決意した主人公の言動としてはブレがなく、むしろ潔く思えた。

チャップリンのあの名言のように、誰かの身に降り掛かった悲劇なんて赤の他人から観れば面白おかしい喜劇にすぎないのかもしれない。どうせ終わりが来ることは避けられないのだとしたら、いっそ自分で自分の人生をコメディとして笑い飛ばすのも本人の自由だろう。
そして、近くにいるからこそ、その悲劇を悲劇としてストレートに受け止めざるをえない家族と、最後にちゃんと向き合えたのも良かった。

英文学教授らしく名言満載。若い頃に読んでたいへん感銘を受けた千葉敦子さんの「よく死ぬことは、よく生きることだ」というエッセイ集を思い出し、読み返したくなった。
既に人生後半戦に入った自分としては、この作品も時々見返して自分に喝を入れたい。

「凡庸さに屈するな!他の98%の人間に迎合するな!」