ひな菊

焼肉ドラゴンのひな菊のネタバレレビュー・内容・結末

焼肉ドラゴン(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

予備知識ほぼなし、おすすめされた作品で、行ける時に!とダッシュでレイトショー。

結果。

心をぎゅっと掴まれて、泣きすぎて呼吸が苦しくなるくらいだった。

第一印象は、なんてドタバタした人たちなんだろうと。喧嘩っ早いし怒鳴りあうし、家の中めちゃくちゃになるし、正直ちょっと引いていた。
でも少し話が進んでくると、それぞれの気持ちが生々しく迫ってきて、私もあのバラック集落にいるような気さえしてきた。

昭和45年、つい最近のことのよう。高度経済成長期、浮かれる日本の片隅に、雑草のような扱いを受けながら、不満を吐き捨てながらも、日々を全力で生きている人たち。

時生のシーンは辛かった。辛すぎる。
オモニが川に躊躇なく入って、泣き叫びながら抱き抱える。家族みんなに感情移入してしまって、苦しかった。

少し大仰だったり焦れたりな部分もあったけど、舞台を観ていると思えば納得。
アボジとオモニの演技(演技なの?と思うくらい)が、とにかく素晴らしかった。

三姉妹の恋愛や結婚をめぐる話は、エピソードとして大きな柱ではあるものの、個々の話はあまり自分にとっては重要に感じなかった。
全編を通してうねるように流れる家族や仲間の愛情、それぞれの複雑な感情を俯瞰して観ている感じだった。

お父さんの最後の語りシーン。
「古い話をしてもいいですか?」
静かに淡々と話し始めるその内容は、あまりにも重く、「はたらいて、はたらいて」と重ねる気の遠くなるような時間と、残酷な環境。もう本当に苦しくて、ここ数年で一番涙を流した映画だと思う。
済州島の事件知らなかった。国有地を騙されて売りつけられた人たちのことも。

辛い辛い記憶を語り終え、
「これが私の人生。子供達にはそれぞれの人生がある。」
その言葉に光を感じた。
ひな菊

ひな菊