みかんぼうや

バイスのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
3.8
本作に登場する、ジョージ・W・ブッシュもラムズフェルド国防長官もパウエル国務長官はもちろん知っているが(少なくとも名前は)、こともあろうかこの政権の副大統領だった本作の主人公ディック・チェイニー副大統領はその名前すらほぼ記憶にない。実話ベースの本作によると、このブッシュ息子政権の舵取りはほぼこのチェイニー副大統領がとっていたことになる。これはかなりの驚き。

本作を観始めるまでは彼のことをほぼ知らなかったので、その敏腕っぷりを描くアメリカ讃歌&政治ヒーロー物だと思っていたら、全くもってその逆。当時の共和党政権に対して思いっきり批判的な姿勢をとった作品でした(作中で自分たちはリベラル(民主党寄り)だと登場人物たちを使って皮肉る潔さ!)

アメリカの政治の話なのでやや人間関係が複雑で、当時の詳しい知識は必要なくとも、民主党と共和党の基本的な立ち位置や各大統領の出身政党が分かっているほうが物語の流れはよりスムーズに入るとは思います。ただ、リーマンショックを扱った「マネーショート」を撮ったアダム・マッケイ監督の所々で遊びの効いたコミカルかつ抜群のテンポによる演出もあって、取っつきにくい政治の話ながらも意外とエンタメ作品として観やすく楽しめてしまう。

個人的には、「マネーショート」は金融の専門知識や用語が飛び交うのに対して、こちらは一人の人物の成り上がり人生を描いているので、その点でも分かりやすく映画としては本作のほうが面白かった。アメリカの政治の勉強にもなりました。

俳優陣も豪華で、何と言っても主演のクリスチャン・ベイルが素晴らしい。特殊メイクとその演技で、まるで本物のチェイニー副大統領のよう(映画後に実物をチェック)。「ウィストン・チャーチル」のゲイリー・オールドマンに引けを取らぬ素晴らしいメイク&演技。

もう一つ面白かったのが、サム・ロックウェル演ずるブッシュ息子の描かれ方。自分では何もできない無能なドラ息子っぷりが酷すぎる(笑)。製作陣が民主党寄りのようだが、ここまでやるか、と思うほど。

しかし、やはりアメリカの政治家の話なので、アメリカ国民のほうが何倍も楽しめるでしょうね。我々日本人だと、森喜朗氏あたりの半生を映画にしたようなもの・・・なのかな!?(そんな映画が公開されたらちょっと観てみたい)
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