mrかっちゃん

バイスのmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
4.3
「一元的執政府論に基づけば大統領は何をやっても合法です。 どれを選びますか?
よし、全部もらおう」

2001年から2009年までジョージWブッシュ大統領の副大統領として就任し影で幽霊の如く糸を引き権力を我が物としアメリカを操っていた実在の人物ディックチェイニーに焦点を当てたブラックコメディポリティカルムービー。

ディックチェイニーを演じるのは第91回アカデミー賞のOPでQUEENのパフォーマンスに一人だけノっていなかったクリスチャンベール。
驚異的な役作りでも有名で今作は20キロ以上増量して挑んだそうです。
逸話として「マシニスト」で30キロ減量し今にも死にそうなガリガリの状態になり、その後「バットマンビギンズ」で筋肉隆々のブルースウェインに変身した役者。
この2作の公開時期は約1年間しかありません。

前置きが長くなりましたが、その役作りもあって圧倒的な存在感と威圧感。
徳川家康並みの狸と呼ぶにふさわしく
虎視眈々と獲物だけを狙いチャンスは我が物にする抜け目なさが伝わってきた。
ボソボソと低い声で話すなんとも言えない絶妙な喋り方いい意味で気味が悪い。
また脇を固めるキャストも演技がとても良かった。
特にサムロックウェルのブッシュ大統領はTVや写真で見た大統領とそっくりで思わず笑ってしまいます。
経験不足の青二才感が醸し出されていて、上手いなと素直に思います。

徹底的なリサーチを基に真実を伝えていますが、そこをブラックコメディに落とし込んでいる事で娯楽性を高め、これが実話であることの嫌な感じが見終わった後にジワジワと染み渡ってくる。
監督の作品は初めて見ましたが、抜群のコメディセンスの中に燻る芯の強い世界にたいする怒りが感じられた。
このバランス感覚がとても心地がいい。
だが全編を通して台詞が多く情報量が多いので、個人的には少し辛かった。

トランプ大統領が今作を観たらどう思うのかとても気になります。

さぁあなたも御出でなさい、
夢と自由に満ち溢れたこの世界へ。
何も臆せず考えずに。
知らなければ良かった?
そんなことばっかりですよ
この世の中はね。