Emma

生きてるだけで、愛。のEmmaのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
4.0
この作品を皆がどう感じたか知りたくてネットの検索窓にタイトルを打ったら、”意味不明”が推測に出てきた。

これがこの映画が炙り出す、現実社会そのものなんじゃないかな、と感じた。

寧子の存在は側から見たらきっと危なっかしくて意味不明なんだろう。その内側にある制御不能な苦しみに、私もこの作品を通して初めて触れた。

躁鬱と呼ばれる、聞いたことはある言葉。その状態のあり方は必ずしも寧子の通りではないかもしれないが、こんな激しさを持つものなんだ、と少なくとも初めて私は思いを馳せるようになった。

お芝居が素晴らし過ぎて最初は寧子の立てる荒々しい生活音や、怒りの激しさに嫌悪感すら覚えた。でも、その奥にある心細さ、誰にも理解されないどころか自分でも理解できない苦しみを垣間見た時、知らないと知るの間にある深い溝を、ほんの少し跨げた気がした。それだけでも見てよかった。

とにかく趣里ちゃんが素晴らしかった。
菅田くんも素晴らしかった。気だるそうに寧子の対応をする電話越しの会話で、「今どこ?」とみるみる変わる表情が頼もしくて。なんだか心が熱くなりました。

あと、喫茶店の人たちの本人のいないところで話す感じ、マジで嫌い。本当に思いやれる人なら絶対あんな形であんなタイミングであんな話はしない。上っ面だけは良くて、鬱は寂しいからなるとかいう持論を正しいと信じて込んでる。こんな人たちにはなりたくない。

2人の人生が交差した3年間、その一瞬に支えられてどうか寧子がまた明るく一歩を踏み出せるようにと心から願いました。
Emma

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