Emma

バビロンのEmmaのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
5.0

あまりに印象的なシーンが多すぎるからこのシーンを選ぶ人は少ないかもしれないけど私の中ではJovan Adepoさん演じるシドニーパーマーが顔に塗る靴墨を渡されたシーンが一番しんどかったです。心がくしゃくしゃにまるめられるというか、折られた心の上を人が平気で何度も通っていくような屈辱感。腹の底から湧いてくる憎しみと悔しさで体が燃えそうになった(感情移入しすぎ笑)シドニーパーマーのその時の気持ちを目線ひとつで、失望も怒りもそれを超越した呆れにも近い感情を言葉少なに体現したJovanさんのお芝居にとても心を打たれましたね。

マーゴット演じるネリーの破天荒で粗野で下品とも言える姿は、この映画では突き抜けてて清々しささえあった笑。特にパーティーで人のおしり触ってるジジイなんなん?見るからに人を見下してるおばさんも。あんなのブチギレて正解。ネリーの怒り爆発の表現方法は確かにかなり強烈なんだけど笑、人としての品性の無さはお前ら勝ってるで〜と言いたくなりました。

マニーを演じたDiego Calvaさんこの作品で初めて知ることになりましたが、一瞬で見る人の心を掴む好青年!から終盤にかけての変貌ぶりラストシーンのお芝居も見事でした。ちょっとニューシネマパラダイスを思い出した。いろんな名作映画シーンを繋ぐのはちょっとダイレクト過ぎる演出な気もしたけど、監督がそれほどまでに映画の歴史に敬意と愛を示したかった(のかな?と思っている)と言う想いはものすごく伝わって来ました。ブラピの最期のシーンも悲しかったな、それ以上に劇場で観客が自分のシーンを笑ってるのもつらかったけど…

それと映画制作の裏側という点ではサイレントからトーキーになってマイクの位置が決められていたりとか声のボリューム調整が難しかったりとか、罵詈雑言が飛びかうカオスなあの現場のシーンはかなりすごかった。見ながら「みなさん本当にお疲れ様です…」と声に出たよ。

映画の歴史を作って来た、その中で淘汰された時代の人々たちに向けて愛を込めて送られたラブレターのような作品でした。(ただしものすごく強烈な!)
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