次男

パンク侍、斬られて候の次男のレビュー・感想・評価

パンク侍、斬られて候(2018年製作の映画)
4.1
「パンク」って言葉に思い入れも肩入れもなく、なんだったら反骨さみたいなものを掲げつつ「パンク」という言葉の括りに甘んじるという自己矛盾に一抹の寒さすら覚えるし、商業ベースで語られる「パンク」なんてそういう意味で一番穿りたくなるし、そもそもなんだよ「パンク」とか「ロック」とか明確な定義を作らずに行動原理の動機付けとして便利使いしてるだけじゃねーか、なんて陰口叩いて後ろ指さすってのが正直な基本スタンスなんだけど、結果年甲斐もなくなにかが沸々と込み上げ、何か肝心なことを叫んでくれたようなすがる思いが生まれて、それを体現した人々に憧憬して、掴んだものを言葉にしたくなる、これはもしかしてまんまと「パ○ク」に当てられたのか?言葉にしたくはないから伏せるけど!


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ネタバレ
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壮大でありながらトリッキーかつ抜けた感のある時代劇に、くすくすと笑いながら「あーパンクってそういう意味でねー」と知ったようにしていた前半。構成もうまいし展開も面白いし適度な予測不能を携えながら上手にパンクを使ってる感じ、って思ってたら中盤で世界は崩れ始めて、後半に壊れた。

先日観たパルムドールのあの映画とか、じゃなくても日々生きてるだけで感じる「この世界の行き詰まってる感」、厭世というより諦観の、「システムとしてそもそも成り立ってないんやろなー成り立ってない上でもなんとか生き延びてて進んでて、そういう意味では成り立ってるのか、でもその程度の」成立に関する諦観。腹ふりがなにで猿がなにでとかまあそんな頭でっかちなことは置いといて、狂乱していく様に行き詰まりのその後を痛感して、思わず僕も腹を振りたい、もしくは猿になりたい。それは「もはや思考なんてめんどいから集団に溶けて生という義務だけ全うしたい」的な感じの。浅野さんみたいに「疲れたから寝るねー」とかはできないから。そういう秩序とかなんじゃかんじゃを全部パンクさんがぶった切って残った世界にある意味納得してたら、「ムカつくから」でそれも壊れて、そして今度は腑に落ちた。「ムカつくから」で生きて戦っていけるはずの世界、のはずなのに世界はそれ以上に非常にややこしくて、ムカつく気持ちも鳴りを潜め、ムカつく気持ちを持続させることも大変で腹を振るか猿になる。のが、僕とかの「ムカつく」。ぐだぐだ書いたけど、端的に言うと、「ムカつくからみたいな感じを頼りに生きてこうか」って思ったりした。

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・腹ふりパレード最高だったなあ。ひとり凛と踊ってた北川さんが面白くて美しかったけど、その差別にも意味があったと気付いて一本取られる。

・誰がどうよかったと言ってったら全員になっちゃうくらい、キャラもの映画としてもみんな大成功でとっても観てて楽しかった!浅野さんが、20歳前後で憧れに憧れた浅野さんで、久しぶりにそういう浅野さんだったから、やっぱり惚れ直してしまう。

・衣装も美術も素晴らしかったし、どうやって意思疎通したんだろ?と思うくらい足並みが揃っててプロの仕事だなあと尊敬した。けど、フォーカスだけ異様に下手くそだった、あれはわざとなのかな。

・製作委員会じゃなくて一社かーーすごいなー。

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…って、乗って観れたのは映画館だったからだとすごく思う。家で観てたら簡単に逃げれるし「すべってんなー」って簡単に済ませてただろうなー。でもすべってたかもしんない。よくわかんない。でも全力だったのは間違いない。
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