RAY

あの日のオルガンのRAYのレビュー・感想・評価

あの日のオルガン(2019年製作の映画)
3.9
“灯された火”


僕は戦争を知りません。
世界は今、コロナウイルスと言う目に見えない恐怖と戦っています。
そのことだって十分に恐ろしいことだし、「出来れば外に出たくない」と細心の注意を払いながら日々を過ごす事を強いられています。
この事と比べることなど無意味なのだろうし、比べること自体出来ないのだろうけれど、完全なる殺意を持って空からミサイルが降ってくる事は“恐怖”と言う言葉で表すには足りないのではないかと思います。


この映画は様々な側面から戦争の恐ろしさを伝え、様々な側面から大切なものを教えてくれます。
時代は太平洋戦争末期。映画の主人公は、日本ではじめて保育園を疎開させる事に挑んだ保母さんです。
国の決定のない状況で、ましてや自分のことだけでも精一杯であろう状況で、彼女たちはどうしてそんな行動を選択したのか。
そのことが感動だけでなく、勇気や希望、もっと大切なことを教えてくれる作品です。


この作品は本当に学びの多い作品なのですが、彼女たちの凄い部分をひとつ挙げるとするならば、彼女たちが彼女たちの“役割”を全うしようとしたと言うことです。つまり、“保母さん”としての役割を。
困難な状況において、自身の役割、ましてや他人について等、疎かになったり、見えなくなったり、とにかく自分がいちばんになってしまうかもしれません。
少なくとも、僕は彼女たちと同じ事が出来る自信がありません。

戦争も災害も病気も、突如として姿を現し、多くの人を巻き込んで行く。
それでも、それらを憎み、「あんなことがなければ」と悔しがるだけではなくて、彼女たちは前を向きました。役割を選択しました。そして、大切なものが何なのかを示しました。

小学生や中学生の頃、夏になると必ず、戦争についての講習を受けました。
その中で聞いた歌のひとつに、『戦争を知らない子供たち』と言う歌があります。
賛否両論はあったそうですが、作者の想いは、“100年後200年後、子供たちがこの歌のタイトルのもとで音楽会を開くことが出来ていますように”と言う事だったそうです。


彼女たちが大切にした子供たちは生き、その子供の、そのまた子供たちも生まれ、時代は過ぎてきました。そして、これからも続いて行きます。
今を生きている僕等も、その輪の中の一人として世の中をつくって行かなければいけないと思います。


灯された、誰かが灯してくれた平和の火がこれからも燃え続け、拡がって行きますように。


観て良かった。





追伸

この映画は“上映運動”が行われたそうですが、僕も多くの方に観て頂きたい作品だと思います。