イホウジン

芳華-Youth-のイホウジンのレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
3.3
安直なノスタルジーにすがった面白みのない映画だった。

映像表現は評価されるべき。自然光の扱い方や群衆の捉え方などは本当に見事。「絵」になる光景がとても多かった。役者陣の演技もなかなか。

ただ、青春映画としては今ひとつな点が頭に残る。登場人物全員にフォーカスを当てようとするあまり、肝心の主人公とヒロインの心情描写が雑になってしまった印象。それなりの感情表現はあったが、その背景にあるものがおしなべて不明瞭であった。全体の展開も、特に後半からがイマイチ。前半までの(それなりな)丁寧さに比べ、後半の極端な展開の速さに頭が混乱した。なんとかならなかったものか。一応最後にはそれなりの着地点が用意されてはいるが、結局「昔はよかったね」程度のメッセージしか受け取れず残念だった。
歴史映画としてもやはり疑問符が付く。人民解放軍全面協力である時点で分かってはいたが、文革と中越戦争を美化しすぎ。世界史を丁寧に学習した者からすると、あれだけの死者を生み出した文革と、ほぼ無意味と言っても過言ではなかった中越戦争を、かくもあっさりと「青春」に昇華してしまったのかと思い残念だった。終盤の展開もどこか“自由な空気”を見下すような空気も流れており、正直胸糞悪かった。
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