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華氏 451のGreenTのレビュー・感想・評価

華氏 451(2018年製作の映画)
2.5
マイケル・B・ジョーダンとマイケル・シャノンの師弟愛がなかなかそそる映画です。冒頭の2人のボクシング・シーンは必見!

マイケル・B・ジョーダンが演じるガイ・モンタグは、次期キャプテン候補の優秀なファイアーマン。マイケル・シャノンは、現在のキャプテン、ジョン・ビーティで、手塩にかけて育てたモンタグに全信頼を置いている。

背景は近未来のアメリカで、「ファイアーマン」とは消防士ではなく、思想統制の手先として国中の書物を焼いてしまう役割を担った警察のようなもの?

原作は1953年、オリジナル映画は1966年とかなり古いので、「近未来」の概念を2018年に合わせて、「本を焼く」だけでなく、小説や歴史、哲学書をネットからダウンロードするコンピューターを壊して焼くとか、そういう工夫もしてある。

高層ビルの前面にスクリーンがあって、ファイアーマンが「イール」と呼ばれる「隠れ書物愛好家」を家宅捜索して、彼らの書物を焼く様子がリアルタイムで全国放送され、それに対してみんなが絵文字をリアルタイムで送れる、みたいな場面もあり、街の様子は『ブレード・ランナー』がデジタル化したようなイメージ。

近代的なモンタグの家もカッコいい。アレクサみたいなのが全部管理してくれてる。でも、「ビッグブラザー」的に監視されてもいるみたい。

衣装もカッコよくて、ファイアーマンの制服を着たマイケル・B・ジョーダンとマイケル・シャノンに萌えまくり。ジョーダンも結構好きなんだけど、今回はシャノンのいい男ぶりに軽く衝撃を受けた。『シェイプ・オブ・ウォーター』のストリックランドのカッコいい版みたいだった。

なぜか舞台がクリーブランドなんだけど、なんで?原作でそうなの?ニューヨークとかじゃないんだ。クリーブランドって結構田舎なので不思議に思った。

あと、本を読んでいる人たちを「イール(Eel)」って呼ぶのはなぜなんだろう?Eel は「うなぎ」と理解しているのだが、日本語字幕でも「うなぎ」と出るのだろうか?「イールの野郎ども、ヌルヌルしてるぜ!(slippery)」とかって、ファイアーマンが言うシーンもあるので、やっぱうなぎなんだろうな。

あらすじは、モンタグは自分がファイアーマンのキャプテンになることを盲目的に頑張ってきたんだけど、イールを検挙し本を焼く内に、自分のしていることは正しいことなんだろうか?と考え始める、というもの。

つまり思想統制で、人々は考えるのを止めた、ということらしい。本をなくそうとする表向きの理由は、例えば哲学書なんかは、色んな考えがあって人々を混乱させ、小説ではクレイジーな人たちがたくさん出てきて恐怖を与えられる。また創作の世界にしか存在しないような人に憧れたりする。こういうことは、結局人々を幸福から遠ざける。無知な方が幸せってことだな。

しかも、その方がいい、というのは、政府が押し付けてきたのではなく、国民がその方がいいと言ってこういう世界になった、と、イールの女の子は言う。

昔は本当に書物を焼いたりってことが世界中であったから、原作が書かれた時はこれはものすごい衝撃だったんだろうなあ。

しかしこの映画ではこの辺は「?」って感じで、モンタグが本を読み始めてから色々思考するようになる、みたいなくだりが「なんで?」って感じになる。あと、イールが集まって住んでいる隠れ家は図書館のようにたくさんの本があり、イールたちは、書物が焼き尽くされても物語を語り継ごうと一人一冊の本を丸暗記しようとしているんだけど、それって「本を読む面白さ、喜び」と相反しない?って思っちゃった。




(この辺からちょっとエンディングに触れます)




あと、イールたちは小鳥のDNAに本をエンコードして、それをカナダに持っていって繁殖させる?って計画を立てるのだけど、なんだそりゃ?って思った。プラス人間の目的のために動物使うな!って思った。小鳥の肛門にトランスポーター突っ込んだりするの可哀想。

それと最も解せないのは、ビーティも、隠れて物を書いているんだよね。多分、ペンを持つことも禁止されているんだけど、ビーティは金庫の中にペンを隠し持っていて、時々自分の考えをタバコの巻紙に書いている。最後、モンタグが小鳥を逃がそうとするのも止めない。

原作が古過ぎるせいなのか、映画が原作のメッセージをうまく噛み砕けていないのかわからないけど、ストーリー的には面白くなかった。
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