アキ

ライトハウスのアキのレビュー・感想・評価

ライトハウス(2019年製作の映画)
3.4
嵐で孤島に取り残され、そのまま見捨てられるんじゃないかという恐怖心がベースにあり、その上で目の前に鎮座するのが全くソリの合わない人間だったら誰だって気が狂っちまう。
しかも、既定の4週間を乗り越え、ようよう明日にはこの権威主義的なモラハラ爺さんから解き放たれると安堵した矢先の大嵐である。迎えの船が島に接近できずに滞在の延長を余儀なくされる事態は、その安堵からの反動で尚の事神経系統に致命的なダメージをおってしまうこと請け合いであろう。

言って見ればパワハラ嫌がらせの類を毎日繰り返された挙句、ようよう部署移動で我がの視界からヤツが消えてくれるとルンルン♪気分で出社したところ、
「今年も1年よろしく」といつもの席になぜかヤツがいて、口端を曲げた不敵な笑みを向けられた時の絶望感、虚脱感に覚えがあるものは、きっと此作にも100%シンクロできると望んだわけではあるのだけれど、結果的にはイマイチ。なのも気が滅入って、狂人と化してしまうにはおあつらえむきな状況設定だというのに、監督の興味は残念ながら初手からそこにはないようで、後半に行くにつれ話を紡いでいくことじたいに”誠実さ”がなくなりゆき、最終的には己のマス〇ーベ〇ションが最優先される画作りになってしまってるのは残念至極。

演技は両者ともヒカってるし、クセの強いハラスメント爺さんと、生真面目な元木こりというキャラ設定もイイ(実話らしいが…)のに、それらを活かしきれておらず(活かそうとしてない)、狂い方にも美学が少し感じられない、というか突飛で、雑で、その雑味がそもそも監督の志向が、エンタメ:アート=1:9な按配ゆえだと思えたのなら良かったのだけど、その路線でいく必然性がイマイチ感じられず、最後まで監督の自〇行為を解釈する気概が発生しなかったのは映像に魂を込めたアート系作品としても按配としてはあまりよろしくないのでは?

気持ち悪さは確かに一級品なんだけどね。ただその気持ち悪さを底支えするものが希薄(メタファーが難解だから、、)なぶん、持続性はなく、その場限りの消費されゆくアート系作品になっちゃってるよね。
とはいえ決して駄作ではないので、神話やメタファーの解釈が三度の飯より大好きな方にとってはあるいは傑作に映る可能性もあるかな。
アキ

アキ