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教誨師のTSのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
3.7
【死刑囚に語りかける師】79点
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監督:佐向大
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:114分
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教誨師という役職は初めて知りました。主に牧師などがボランティアで行う役職だそうですが、その内容は死刑囚と話をすること。弁護士ではないので減刑などは無論できませんが、死を待つ者と会話することにより、少しでもその人の心を穏やかにするというのが目的なのでしょう。大杉漣の遺作でもあり、遺作が今作というのは些か暗い気がしますが、大杉漣演じる教誨師と6人の死刑囚との会話は見ものでありました。

6人の死刑囚は様々。とても死刑囚に見えない文盲のおじいさんがいれば、サイコパスの雰囲気を醸し出す若者も出てきます。一応牧師ですから、祈れば神は罪を赦してくれるという説教をしますが、基本的には死刑囚とのコミュニケーションが大事であり、徐々に死刑囚たちは教誨師に心を開いていきます。

ただ、もう助からないというのは両者知っていますし、なによりもその死刑執行の場面に立ち会わなければならない教誨師も苦痛であります。ただ、ここまでで死刑囚の苦しみが少しでも和らげられるのならば教誨師の存在意義は大きいですし、どうせ死ぬならば最後くらい改心を。。といったところなのでしょう。

どれだけ余裕をこいてる人でも最期の時は顔が真っ青になる。死というのは恐ろしいものです。無になるということですからそれはそれは恐ろしい。お互い他愛のないことを話してるのに死刑囚の顔に「助けてくれ!」と書いてるようにしか見えない。それはかの『戦場のメリークリスマス』の北野武のラストシーンを見てるかのようであります。
また死を前にすると人は超越的な何かに縋る気持ちを抱くということが理解され、そのような流れの中で信仰、つまり宗教というものが生まれたのかなとも思ったり。古代の人々は常に死と隣り合わせの環境にいたと推測でき、それを回避するにはやはり何か超越的なものに頼む他ありません。話は逸れてしまいましたが、今作を見てそのあたりのことも感じずにはいられませんでした。
TS

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