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祇園祭のBaadのレビュー・感想・評価

祇園祭(1968年製作の映画)
4.0
毎年祇園祭の期間に数回上映されるこの映画、気になっていたのですが、ようやく見ることが出来ました。見てみて驚いたことが色々ありますが、際立った大傑作という程の映画ではないので、自治体が権利を持っているのはこの映画にとっては幸いだったかもしれないと思いました。
★4つはメッセージ性を考慮しての評価です。

いつでも低料金で見られる映画という先入観があるので、希少価値によるかさ上げなしの感想になります

ちなみに無料で見られるというのは結果論で、本来は京都文化博物館の常設展の料金で見るものなのですが、夏の祇園祭の期間に上映されるため、無料入場期間に重なる場合が多のです。
祇園祭の期間外でも特別のイベントなどで団体貸し出し等で見られることもあります。

上映開始後まず驚いたのは2時間40分という上映時間と、色調が意外にバタ臭いこと。黄色と青が強すぎるのが気になりました。躍動感は出ますが、決して上品ではありません。どういう目的でどういう経緯で採用されたなんと言う撮影方法なのか知りたいと思いました。

中村錦之助主演で京都府のバックアップにより制作されたこの映画、途中で紆余曲折があったとのことですが、時代劇ではありますが当時の時代背景を色濃く反映して、明白な反戦映画になっています。それが、厭戦ではなく、しっかりと闘って平和を勝ち取る反戦映画であるというところが素晴らしいです。

特に町衆たちが自分たちのおかれている立場を自覚してまとまるまでの経緯は上手く描かれていると思いました。

後半の祇園祭の準備のあたりからは室町時代というよりは、現代の京都の町衆の気風を反映した作りになっていますが、少々美化し過ぎか?

長刀鉾の町内に話を絞り過ぎなのは群像劇としてはどうなのかと思い、少し物足りなく思いましたし、岩下志麻さんの熱演もむなしくあやふやだったヒロインの扱いもちょっとどうかと思いましたが、府が制作に絡んでいるので脚本が意欲的でもラストが無難な閉め方になるのは仕方がないかな、と思います。

いざとなったら民衆を捨てて逃げる侍、というのは第二次大戦時の日本軍のあり方への批判が反映されているのでしょう。まだ戦争の記憶が生々しい時代ですから、家族知人にふりかかった不幸に思いを馳せた人も公開時には少なくなかったのでしょう。

作品の成立の事情からしても時代考証はしっかりしているのでしょうが、制作当時の「現在」と作品上での時代が重なって少しわかりにくくなっています。

長めの映画ですが、それぞれのスター俳優をじっくり見たいという人には嬉しい作りでしょう。中村錦之助のほか、三船敏郎(乗馬シーンがすばらしい)、田村高広のファンは必見。

岩下志麻さんは最初誰かわかりませんでしたが、メークのせいか、実年齢よりかなり老けて見えお気の毒でした。演技はしっかりしていましたが、脚本があれなので、役作り大変だったのでは?とお察し申し上げます。

豪華キャストの割に後半の撮影がチープですし、大人の事情ではしょられたエピソードもありそうな感じであまりバランスのいい映画ではないので、見ていると頭の中が??でいっぱいになります。詳しい解説付きの上映でない限り、祇園祭の期間中に見た方が無難でしょう。

今年は巡行が二回になったので、24日にまだ2回上映があります。

(闘う町衆 2014/7/18記)
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