わたふぁ

リッキー・ジャーヴェイスの人間嫌いのわたふぁのレビュー・感想・評価

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イギリス出身のスタンダップコメディアン、リッキー・ジャーヴェイス。今作では、7年ぶり、56歳にしてスタンダップの大舞台で見事な復活を遂げている。

はー。笑った。彼のネタでは、人が簡単にポンッと生まれて、簡単にパタリと死ぬから面白い。棒人間のようなモロさで「命」が描かれている。映画はよく神の視点で作られるというが、彼は天からではなく3階建の屋上くらいから人々を俯瞰する悪魔、という感じがする。

だから、2011年に二度目のゴールデングローブ賞の司会を務めたときは、得意のブラックユーモアが差別発言として物議を醸して話題となった。
もう呼ばれることは無いだろうと思われたが、翌年の2012年、そして2016年にも再度司会を任されている。

ただ一度の失敗を許さないということはしないハリウッド側の寛容さも然り、業界でのスタンダップコメディアンに対する敬意の高さを窺い知ることができる。
再びオファーしたのだから「やっちゃってください」という意味だし、妙なプレッシャーがかかる中で期待に応えて「やっちゃえる」のも大物リッキーの凄いところ。

例え誰かを差別的に笑うブラックユーモアだったとしても、ただ笑って終わりではなく、人々に考えさせる役目も“笑い”にはある、ということが再オファーのポイントとなったようだが、結局は今“ヒール”を欲しているのが本音だと思う。ヒールこそ本当のバカには真似できない役回りだし、誰かがそれっぽく装っても一朝一夕で成せるものではない。

だから悪業を一手に引き受けるリッキーは大変だと思うが、今作のようにスタンダップで見事な復活を遂げたことだし、40代の中堅どころの無難で爽やかな司会にみんなが飽きた頃、また是非セレブたちを苦笑いの渦に巻き込む迷司会を見せてほしい。