Tラモーン

SPL 狼たちの処刑台のTラモーンのレビュー・感想・評価

SPL 狼たちの処刑台(2017年製作の映画)
3.8
最近アジア映画を観てなかったなっと。


香港の警察官リー(ルイス・クー)が男手ひとつで育ててきた15歳の娘ウィンチー(ハンナ・チャン)がパタヤで行方不明となった連絡を受けタイへと向かう。指揮を取る現地刑事のチュイ(ウー・ユエ)に頼み込み捜査に同行する。やがて事件に関わる臓器密売組織とその黒幕である巨悪の姿が見えてくる。


サクッと観られるかなぐらいの気持ちだったけどこれはなかなかの掘り出し物。
香港アクションらしい派手さと、韓国ノワールさながらのハードな展開はなかなか見応えがあった。若干難をつけるならば、香港的な派手なアクションはダークな展開の中ではやや浮くのでは…という気もした。

プロットは『96時間』とそっくりなんだけど、この作品の印象が全然違うのは主人公の背負った自責の念。
娘を愛するあまり彼女を束縛し、彼女の愛する人を奪ってしまう歪んだ愛情の暴走。
それがリーの強みでもあるんだけど、捜査の中でも先走ってまだ犯人と確定していなき相手に暴力をふるったり、残忍な拷問まで行ってしまう。
結果的に事件と無関係だった盗撮犯をボコボコにするところにリーの娘に対する暴走ともとれる執念にも似た愛情が見てとれる。

"誰が決めるの?どの命が大事なのかを"

娘を愛するあまり、娘に命の選択を迫ったにも関わらず、今度は娘の命が天秤にかけられる羽目になってしまった皮肉。自らの愛が招いた業。因果応報やね…。
そんな複雑な心情を松平健にクリソツの顔面で表現しきるルイス・クーはやっぱりカッコいい。

対するバディのウー・ユエが演じたチュイはめちゃくちゃ理性的で、部下や家族に強い責任感を持ちつつも私情に走らない冷静な男。八極拳で全国優勝経験があるというウー・ユエのアクションは確かに目を見張るものがある。だけどチュイはいい奴すぎてストーリー上の印象が薄いんだよなぁ。黒幕に立場を利用されたりと結構な巻き込まれっぷりなのに。
でも結果として彼の結末がリーと対極になったのがまた皮肉なんだよな。

でもこういう男臭い生き様を描く香港ノワールの系譜は『男達の挽歌』から変わってねぇなぁと嬉しくなる。


トニー・ジャーはめちゃくちゃ主要キャストみたいな位置付けであらすじにも書かれてるけどあれじゃ物足りない!もっともっとアクションできるナイスガイ役で行けただろ!

それでもまぁ南国パタヤを舞台に治安の悪い顔をした奴らがアクションを繰り広げるのは見応えバッチリ。それにしても実戦でジャイアントスイングでダメージ与えるのは初めて観たわ…。
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