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バンクシーを盗んだ男のnnmのネタバレレビュー・内容・結末

バンクシーを盗んだ男(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

自分用の備忘録的なものとして書く。
バンクシーがパレスチナ・ベツレヘムに描いた「ロバと兵士」からはじまりストリートアート、もしくはアート全体に関わる話へと展開していくドキュメンタリー。アーティスト、コレクター、美術史家、そして一般民衆。多方面からみたバンクシー、ストリートアートに対する意見が盛り込まれていて鑑賞後は思わずため息をついてしまった。パレスチナ人にとってバンクシーのパフォーマンスは自分たちを正確に表現しているという点でありがたいもので、でもみんながみんなそう思っているわけではなく偽善的な行為だと批判する人もいる。また、壁に描かれたバンクシーのアートはストリートアートといえどレベルは高いものであり、メッセージ性や話題性も相まって?アート単体が切り取られて高値で売りさばかれる。しかしバンクシーのアートはその土地に対する、そこに関するメッセージを伝えるものであり、アートがそれが描かれた文脈から切り取られ孤立してしまうとそこに意味はあるのか、という問題が生まれる。実際、「ロバと兵士」はロンドンのモールで展示されたのち、オークションにかけられたものの最低値までいかずいまもロンドンのどこかの倉庫に眠ったままだという。コレクターは「アートを求める人がいて、アートに価値が生まれる。だから売る。文脈うんぬんは関係ない」みたいなことを言っていたけど、現代の美術の世界は実際その通りでどんな作品か、よりもどれくらいの価値があるか、言い換えればどのくらいの値がつくか、が最重要事項なのかもしれないし、作品の価値は作者が誰なのかによって決まってしまうことが大きいのかもしれない。そこでは作者の意図は疎外されているのかもしれない。そういった意味でストリートアートを中心とした現代の美術の世界全体の構図とその問題を浮き彫りにしているのかなとおもった。それと、ベツレヘムやバンクシーのこのような事態がドキュメンタリー映画として描かれていて、それを映画として見ている、もしくは消費している我々、という構図が既にワリドが言うところの「偽善」なのかもしれないとおもった。上映後のトークショーで片桐仁さんが、バンクシーがこのように映画で描かれ、それを鑑賞する人間がいる、そのことも含めて全てが「アート」なのかな、と仰っていた。なるほどなあとおもった。とにかく各方面の生の言葉が盛り込まれているだけに、バンクシー礼賛に傾倒するばかりではないようにかんじられ、アートとは何か、どうあるべきかという問題提起を行っているようにおもわれた。あと最後に、中盤で現地の男性ふたりがボイパと現地語の歌で歌うシーンが印象的だった。
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