まーしー

バグダッド・スキャンダルのまーしーのレビュー・感想・評価

バグダッド・スキャンダル(2018年製作の映画)
3.5
フセイン政権下のイラク。経済制裁の影響で貧困にあえぐ同国を支援するため、国連が同国の石油を管理下に置き、オイルマネーで食料支援を行っていた。その名も「石油食料交換プログラム」。しかし、その背後には多くの利権が絡んでいた――。

元国連職員による実話ベースの作品。人道支援という名のもと、結局は人々のエゴが垣間見える骨太の社会派サスペンス。
出てくる登場人物のうち、誰が味方か解らず、スリルは十分。この会話は盗聴されていないのか、この車に乗って爆破されないのか――そのようなことを気にしながらの100分。

この国連の不正は、当時、日本でも報道されていたようだ。私は全く知らなかった。
国連と言えば国際協力・国際平和の維持を目的として創設された組織だが、本作からは残念な実態が浮かび上がる。そこに存在するのは正義でなく、利権。
「民主主義に汚職はつきものだ」
ベン・キングズレー演じる事務次長が述べたこの言葉が、国連の全てを物語っていると言えよう。そして、本作で描かれた不正は、氷山の一角のような気がする。

保護主義の台頭、コロナウイルス感染拡大に伴う往来自粛、ブレグジットの実現など各国が内向きに進んでいる今こそ、多くの人に観ていただき、国際協力について考えていただきたいと思った。