離婚し、宮崎県の実家に帰った里枝（安藤サクラ）。
家業の文房具屋で谷口大佑（窪田正孝）と出会い、やがて再婚する。しかし、夫と思っていた人物は、谷口大佑とは別人の男性だった——。
他の方もレビューで触れられているように、「ある男」の正体を追うミステリーというより、その裏に隠された秘密を観客に問う、社会派ドラマだった。
なぜ「ある男」は谷口大佑と名乗ったのか。そこには、一般人には想像しがたい事情があった。
その「ある男」を追うのは城戸章良（妻夫木聡）。在日３世の人権派弁護士。
家庭の空気が悪くなるほど、「ある男」に囚われていく。
真実を知れば「なるほど」と思うが、同時に日本社会の闇を垣間見た気がする。
目に見えない差別や偏見——その犠牲者が、谷口大佑であり、城戸章良なのかも知れない。
詳細はネタバレになるので控えるものの、「出自からの脱却」を伝えたかったのだろう。
いま話題の、SNS疲れから来る「人間関係リセット症候群」と同じベクトルながら、本作で描かれている内容はさらに重い。
演技派３人のほか、わずかな出演時間ながらも圧倒的な存在感を放った柄本明が出演するなど、役者は豪華そのもの。
多くの方に考察していただきたい。
