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幸福なラザロのギルドのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
3.6
同時期にカンヌ映画祭のパルムドールを受賞した万引き家族と雰囲気が近いかも。

 寓話性の高い映画だけど、前半ではイタリアのカラっとした緑が美しい風景をはじめとした映像面での美しさ・後半ではドラマと象徴性が織りなす展開と見せ場が大きく転換する部分が良かったし、それを映像の解像度で魅せるところも映像面に機能性を持たせていて良かったです。
特に後半ではラザロの性格ととある動物のスピリチュアルな象徴性が上手くマッチしていて、それが効いたストーリー展開・ラザロの特別な暗示が良かったです。中盤のターニングポイントに存在する動物/クライマックスの車の列と逆行して躍動感溢れた動物の走る姿が印象的で全体的に映画的上品さが光る映画でした。

 ただ「搾取する/される構造、純粋な目線だからこそ見える理想と現実の軋轢」の寓話性が高い作品で、それ故に都合の良いように利用する女性・老人が好きになれなかったし、アイデアの段取りで前半が退屈に感じました。あと後半のストーリーもちょいちょい都合の良すぎる部分もあって、伝えたいことが先行した奇をてらうだけに留まってる部分も散見して、そこが勿体ないと感じました。

 見終わってからの複雑な心境はLa Stradaのジェルソミーナを彷彿させ、純粋さが喰われる構造・搾取する側される側の構図は普遍的だし時代を越えても変わらないんだなと考えさせられる映画でした…。どんなことでも正直さ・主張の抑圧は弱みに繋がるし、見た目が綺麗だけど語り口は汚いギャップがどこかカンヌに選出されそうな一作。
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