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幸福なラザロのsonozyのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
5.0
カンヌ国際映画祭 審査員グランプリ受賞作「夏をゆく人々」で注目されるイタリアの女性監督アリーチェ・ロルバケル作。
(久々に映画館で鑑賞です)

外部から隔てられたイタリアの小さな村に暮らす村民たちは、小作制度が廃止されたにも関わらず、それを隠蔽する領主の伯爵夫人の元、タバコ農園で働かされ、働けど働けど、何故か借入が増やされる(現金収入はなし)という不条理な状況で暮らしていた。

そんな中、両親がいない(不明な)純朴な働き者の青年ラザロは、頼まれた事は断らず、不平も言わず、怒りもせずというキャラのため、村民からいいように使われていた。

ある日、村にやってきた伯爵夫人家族。バカ息子タンクレディ(バカ野郎ですが母の行いは許せない)が、そんなラザロを気に入り「お前とは兄弟かも知れない。俺の計画に協力しろ。」と誘い、とある計画が進む。。。

聖人的な存在のラザロは、何かを望むわけでも、真理を問うわけでも、悪を正すわけでも、恵まれぬ人を救うわけでもなく、他者を信じて、他者のために何かをしようとする。
そもそも水も食べ物も摂らないし、真冬でも最低限の衣服。

このラザロ役の新人 アドリアーノ・タルディオーロの発掘がこの作品のすべてとも言えますね。
彼の純粋無垢な顔つき、表情、人のために生きるための骨太な体型。
彼が佇んでいる姿や、タンクレディと2人で狼の声を真似て叫ぶシーンを思い出すだけで涙が出ます。

ヘイト溢れる現代社会への、監督からの静かなメッセージ、受け止めました。
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