チッコーネ

ブラック・クランズマンのチッコーネのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.5
しばらく作品が途絶えていたので心配していたのだが(『オールドボーイ』はどうも触手が動かず、観ていないのだけど)、本作は久々に気合いが入っている感じ。近年の政情や事件が、監督を大いに刺激したのかもしれない。

ただ今回は、地味で陰鬱な雰囲気を補う華やかな場面が、ほとんどない。監督ならではの冷笑的で知的なユーモアはたっぷりと盛り込まれているのだが、クライマックスも地味。また現実へ引き戻すラストに繋ぐためか、大団円に予定調和な香りが漂って、素直に喜べなかった。まぁ「問題は今も終わっていない」からなのだが…。

そんな中でも『邪悪なレイシズムを隠し持つ、一見平凡な主婦』というキャラはかなり刺激的で、印象に残った。
また白人と黒人の主張が、一部奇妙に似通っていることを示す編集は、意図的なものであろう。

どんなに真っ当な主義主張でも、人の手にかかれば『ミイラになったミイラ取り』となってしまう。その事実は、各国の歴史が証明している。本当に恐ろしいのは、肌の色や人種などの差異を差し引いた、人間そのものなのだ。
その意味で今後、『脱・アメリカ』な視座を持つスパイク・リー映画を観てみたいのだが、やはり知的で勇敢な彼を以てしても、例の『愛国心』とやらからは逃れられないのだろうか。